神戸製鋼所は,薄型テレビ受像機やパソコン,複写機など各種電子機器の電磁波シールド対策に有効な高機能鋼板「コーベデンジシールド」を開発,2008年夏から販売を開始すると発表した。新しい高機能鋼板としては,電磁波シールド効果を追求した「高導電タイプ」と,電磁波シールド効果に加えて同じくニーズの高い放熱効果を持たせた「放熱タイプ」の2種類を用意した。例えば,前者は薄型テレビ受像機のバックカバーに,後者はパソコンの筐体などに使える。販売価格は通常の電気亜鉛めっき鋼板の2~3倍を予定しているが,「シールド効果が高い分,ガスケットやフェライトコアといった電磁波対策部品が不要になるなど,トータルコストでは従来と同等以下になるケースもある」(同社)と見ている。

 高導電タイプは,亜鉛めっき鋼板の片方に「高導電性電磁波吸収被膜」を,もう片方に従来の「意匠性塗膜」を被覆した構造を採る。新開発の同被膜はポリエステル系の樹脂に,ある金属を添加したものだ。「この金属により,電磁波を吸収(熱に変換)し減衰させる」(平野氏)機能を持たせた。

 一方,放熱タイプは亜鉛めっき鋼板の両面に,やはり新開発となる「放熱性電磁波吸収被膜」を付けたものだ。同被膜には上述の高導電性電磁波吸収被膜と同じポリエステル系の樹脂に同じ金属を添加しているが,「その量を変えた。高導電性電磁波吸収被膜の場合は10質量%以下だが,放熱性電磁波吸収被膜の場合には50質量%と多くした」(平野氏)。加えて,熱放射率に優れる炭素系の材料を10質量%添加し,密閉構造の筐体の内部温度を5~8℃低減させるほどの放熱性を付与した。

 肝心の電磁波シールド効果をDVDの筐体で評価した場合,電力値で見た漏洩電磁波は,高導電タイプが従来の1/9に,放熱タイプが1/4に下がった。いずれの結果にも,鋼板の高い導電性と被膜の優れた電磁波吸収特性の二つが効いているが,寄与率が異なる。高導電タイプでは鋼板の方が,放熱タイプでは逆に被膜の方が高いという。高導電タイプの被膜の厚さが数μmと薄く,逆に放熱タイプの被膜が10μm弱と厚いのは,実はこのためだ。

 同社によれば,これまで対応が難しいとされてきた高周波数領域でもシールド効果を確認したという。今回の鋼板を活用すれば,電磁波対策部品を省略するだけではなく,CPUの高速化や高機能化が図れる,装置設計の自由度が増すといったメリットが得られそうだ。同社は月間500tの販売を見込む。