Intel社Senior Vice President,Ultra Mobility Group General ManagerのAnand Chandrasekher氏
Intel社Senior Vice President,Ultra Mobility Group General ManagerのAnand Chandrasekher氏
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ARM社の製品とAtomの性能を比較
ARM社の製品とAtomの性能を比較
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 米Intel Corp.は2008年4月2日,中国・上海で開催中の「Intel Developer Forum Spring 2008(以下IDF)」で,同社が開発中の低消費電力の新マイクロプロセサ「Atom」について詳細な情報を明らかにした。

 同社はこれまでにもMID(Mobile Internet Device)向けとして,2007年前半に「McCaslin(開発コード名)」を投入していたが,既存のCPUコアを最適化したものにすぎなかった。今回投入するAtomおよびそのプラットフォームである「Menlow(開発コード名。正式名称は『Centrino Atom』だが,マイクロプロセサ名のAtomと混同しやすいのでここでは開発コード名を使う)」は,MID向けにマイクロアーキテクチャを含めて新規に開発したものである。

 Atomのダイサイズは25mm2。パッケージ・サイズは13mm×14mm×1.6mmと,同社として最小のマイクロプロセサになっている(写真1)。これに4700万個のトランジスタを盛り込んでいる。消費電力はTDP(熱設計電力)が動作周波数によって0.6~2.4W。平均では数百mW程度に収まる見通しである。これを実現するため,動作ステートとして「C6」ステートを追加した。動作ステートは電源管理のための状態で,CPUコアおよびキャッシュもすべて電源を落とした状態である。特にMIDなどモバイル機器の場合,90%以上の時間がC6ステートになるとIntel社では見ている。

 動作周波数は800M~1.86GHz,FSBは533Mまたは400MHzで,「3W以下の消費電力では最速」(Senior Vice President,General Manager,Ultra Mobility GroupのAnand Chandrasekher氏)。16ステージのパイプラインを備え,分岐トレース・バッファは128エントリ格納できる。

 Atom専用のチップセットは,同社としては初めてノース・ブリッジとサウス・ブリッジを統合。PCI-ExpressやUSB,SDメモリーカードなどへのインタフェース,およびDirectX9に対応したグラフィックス機構を内蔵する。1080iおよび720pのHD動画の復号化も可能である。

 同社がAtomの発表にあたり,強く意識しているのが英ARM Ltd.のマイクロプロセサだ。「ARMコアの製品だと,例えばiPhoneにしてもNokia社の「N810」にしても,パソコンの新技術を取り込むのに遅れが出る。x86アーキテクチャのAtomであれば,パソコン用と同時に対応できる」(Chandrasekher氏)。またインターネットの利用に関しても,「パソコン向けのコンテンツを問題なく見ることができる。ARMコアのマイクロプロセサを搭載した製品だと,製品にもよるが大量のエラーが出て見られないサイトも少なくない」(同氏)。

 性能面ではARM11コアやCortex-A8コアとの比較結果を示した。「1.2GHz動作のAtomは600MHz動作のCortex-A8の,1.6GHz動作のAtomは1GHz動作のCortex-A8のそれぞれ2倍程度の性能になる」(同氏)。ベンチマーク・テストにはEEMBC Suiteを使った。なお,Cortex-A8コアの性能はARM11コアの実測値を元に予測したという。 またWebページの表示で比較すると,ARM11コアを採用した「OMAP2420」に比べ4.1~6.5倍高速という実測結果が得られたとする。TDPで比較するとまだARMコアの製品に比べ高いが,「性能が高い分,フルパワーで動作する時間が短い。平均した消費電力はAtomの方が低くなる」(Intel社FellowでUltra Mobile Group,Chief Platform ArchitectのShreekant Thakkar氏)。

 Atomを使ったMenlowプラットフォームでは,PNDやインターネット・タブレット,携帯ビデオ・プレーヤを応用のターゲットにする。2009~2010年に登場する,次世代のプラットフォーム「Moorestown(開発コード名)」では,携帯ゲーム機やスマートフォンも対象にする。これにより,現在携帯電話機など組み込み向けマイクロプロセサで優位に立つARM社に対して全面的に勝負を仕掛ける構えである。

当初コメントをPat Gelsinger氏としていましたが,Anand Chandrasekher氏の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は既に修正済みです。

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