図●NANDフラッシュ・メモリの用途別需要のビット比率(2006年〜2007年実績,2008年〜2012年予測)
図●NANDフラッシュ・メモリの用途別需要のビット比率(2006年〜2007年実績,2008年〜2012年予測)
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 米Apple Inc.が,2008年1月にノート・パソコン「MacBook Air」を発表した。最薄部が4mmと薄いことが話題を呼んだモデルだ。これはオプションでハード・ディスク装置(HDD)の代わりに64GバイトのSSD(Solid State Drive)を搭載できる。そして,2008年3月に今度は東芝が,128GバイトのSSDを搭載したノート・パソコンを発表した。この2つの製品は,SSDのNANDフラッシュ・メモリにMLC(Multi Level Cell)タイプを採用している。これまでSSDはSLC(Single Level Cell)タイプだったことからすると画期的なことである。

 SLCが1つのセルに1ビット分のデータを記録できるのに対して,MLCは1つのセルに2ビット分のデータを記録できるので,SLCに比べて大容量に向いている。大容量を求めるパソコンにはMLCが適している。しかし,信頼性の問題でこれまでMLCの採用は見送られてきた。2008年に入ってようやくMLCタイプを搭載したパソコンが大手パソコン・メーカーから発表された。少なくとも微細加工技術56nmであれば,MLCの信頼性は問題がないとメーカーは見ているようだ。

2008年のSSDはプレミア品

 3月に発表された東芝のノート・パソコンは,128GバイトSSD搭載モデルと120GバイトHDD搭載モデルの価格差が発表資料によると12万5000円。これまで64GバイトSSD搭載モデルで,HDD搭載モデルとの差が5万~10万円程度だったことからすると,MLCを採用したことでHDDモデルとの価格差が大きく縮まったわけではない。MLCを採用したものの,まだコントローラICなどのコスト上昇分がある上に,本格的に普及するほどには価格差が縮まらないため,無理して低価格で販売するよりも,プレミアム製品として販売する戦略のようだ。SSD搭載モデルは,HDD搭載モデルに比べて,薄型化,軽量化,低消費電力,耐衝撃性の向上が図れる。これだけの高付加価値品を安く売る手はないということだ。

2010年にはHDD搭載モデルと価格差1万円に

 NANDフラッシュ・メモリのメーカーとして東芝を見ると,積極的なコスト削減を計画している。2008年に入り,微細加工技術43nmでの量産を開始した。さらに,2010年には微細加工技術が35nmに到達する。微細加工技術が進化すれば,チップ・サイズが小さくなり,コストは大幅に下げられる。35nmまで微細加工技術が進めば,HDDモデルに対してパソコン本体価格は,価格差が1万円以下になるだろう。

 問題は,微細化が進んだときに,信頼性を保てるかどうかだ。それを占う上で,今後は43nmのSSDを搭載したパソコンが,2008年後半に発売されるかどうかが注目の的になる。

 日経マーケット・アクセスの予測では,信頼性を満たせば,2010年には世界全体のパソコンの15%程度はSSDを搭載し,NANDフラッシュ・メモリ需要全体の40%以上を占めることになる(図)。これまでNANDフラッシュ・メモリ需要はメモリ・カードや携帯型音楽プレーヤがけん引した。2010年からはパソコンがその役を担う。