図1 手前が今回のK-PSFn202,奥がK-PSFn2
図1 手前が今回のK-PSFn202,奥がK-PSFn2
[画像のクリックで拡大表示]
図2 右が今回のK-PSFn202,左がK-PSFn2
図2 右が今回のK-PSFn202,左がK-PSFn2
[画像のクリックで拡大表示]
図3 E-LASFH17のメーカーは光ガラス(屈折率2.00),S-LAH79はオハラ(屈折率2.00),TAFD40はHOYA(2.00)である。本図は住田光学ガラスがカタログ・データに基づき作成した。
図3 E-LASFH17のメーカーは光ガラス(屈折率2.00),S-LAH79はオハラ(屈折率2.00),TAFD40はHOYA(2.00)である。本図は住田光学ガラスがカタログ・データに基づき作成した。
[画像のクリックで拡大表示]
図4 特性一覧
図4 特性一覧
[画像のクリックで拡大表示]

 住田光学ガラスは,着色度が極めて低いプレス成形用の高屈折率ガラス「K-PSFn202」を発売する。既に量産準備を整えた。

 用途は一眼レフ機や放送局用カメラで用いるレンズやプリズムなど。屈折率(nd)が2.02、アッベ数(νd)が21.5である。

 屈折率が2程度のガラスはこれまで,青く見える短波長の光をカットするという課題があった。このためガラスの外観は黄色っぽく見えた(図1,図2)。

 住田光学ガラスの屈折率2.00の品種「K-PSFn2」と,屈折率が2.14の品種「K-PSFn214」も,こうした課題を抱えていた(関連記事1同2)。

 デジタル・カメラでは,銀塩カメラと異なり着色度が高い品種も使える。撮像素子の色フィルタや後段の画像処理LSIで,短波長の光が欠けることを前提に色作りをすればよいからだ。

 しかし,光の一部が失われカメラの感度が下がることも確かで,一眼レフ機などの厚いレンズには適用しにくかった。

まさかの透明

 これに対し今回のK-PSFn202は,ほぼ無色透明に見えるほど着色度が低い。他社品と比べても,短波長の光の中でもカメラの色作りに影響するとされる420~450nm付近の透過率が高い(図3)。

 K-PSFn202を厚さ10mmに加工したときの内部透過率は,波長が420nmとき72%,同440nmで91%,同460nmで96%,同480nmで98%である。

 旧来の硝材の常識では,420~450nmの波長域で今回ほどの内部透過率と屈折率を持ちながら,民生機器に使えるだけ大量に生産することは極めて困難とされていた(図4)。レンズ材料設計で多くの実績を上げてきた同社 研究開発本部長の永浜忍氏も「こんなに透明になるとは思わなかった」という。

Geを不使用

 住田光学ガラスは,今回の材料組成や製法を明かしていない。ただし,次の2点を開示した。一つは,K-PSFn202が同社の既存製品であるK-PSFn214と同じホウ酸系ガラスであること。「K-PSFn214の開発途上でノウハウを蓄積したことが今回生きた」(同社 研究開発本部 素材開発部 主任技師の山本吉記氏)。

 もう一つは,屈折率を高めるために比較的多用されるGe(ゲルマニウム)を含有していないこと。Geは昨今の原料高騰のあおりをうけて「調達が思うにまかせない。納期面で顧客に迷惑をかけかねなかったが,今回のK-PSFn202はこの問題がない」(同社の永浜氏)。

プレス成形可

 K-PSFn202は,同社従来の屈折率2程度の品種と同じく,プレス成形に対応している。成形温度は505℃前後である。カタログ・データから推定する限り,他社製品の成形温度のほとんどは,これより100℃以上高い。このため,プレス成形よりも加工賃が高くなりがちな研磨製法に向いている。K-PSFn202は,PbやAs(ヒ素)を含有していない。

この記事を英語で読む