パイオニアは2008年3月7日,PDPの生産から撤退することを正式に発表した(PDF形式の発表資料Tech-On!関連記事1同2)。次の新製品に搭載するパネルを最後に自社生産を終了し,外部調達に切り換える。撤退の理由をパイオニアは「今後想定される販売数量でコスト競争力を維持することは難しい」と説明している。一部報道では,松下電器産業からパネルを調達し,開発に関しては松下電器と共同で進めていくとされたが「調達に関しては,当社の持つ技術を盛り込むことを含めて現在協議中」(パイオニアの発表資料)とした。なお,この件でパイオニアは同日17時から記者会見を予定しており,Tech-On!ではその模様を追って詳しく伝える。

 PDP生産撤退に伴ってパイオニアはディスプレイ事業全体の縮小を考えており,関連人員の一部をBlu-ray DiscなどのAV機器事業やカー・エレクトロニクス事業などに再配置する計画。カーナビに関してはテレマティクス機能の強化,車載AV機器に関してはCDからDVDへの移行を加速させることなどをテーマに掲げた。Blu-ray Disc事業に関しては,自社開発を「全世界で普及が見込めるプレーヤ」に絞り込み,レコーダは共同開発やアウトソーシングで製品系列を揃えるとする。液晶テレビについてはシャープから供給を受け,2008年秋から欧州を皮切りに市場投入していく。2009年度(2009年4月~2010年3月)には,Blu-ray Disc機器や薄型テレビを扱うホーム・エレクトロニクス事業の黒字化を目指す。

一時は業界首位を目指したが…

 パイオニアは1997年4月にPDPの生産を開始。その後もコントラスト比の高い機種や画素ピッチの小さい機種,筐体の薄い機種を開発するなど,技術力の高さで存在感を放ってきた。1997年から2004年ごろまでは生産能力も積極的に増強し,2004年2月にNECのPDP事業を買収すると,市場シェア首位を事業目標に掲げた(Tech-On!関連記事3)。

 しかし,この2004年ごろからプラズマ・テレビの市場競争はますます熾烈になり,極端な価格下落がパイオニアの収益を圧迫しはじめる。2004年度(2004年4月~2005年3月)決算でパイオニアは9年ぶりに純損失を計上(Tech-On!関連記事4)。PDPの生産計画も下方修正を余儀なくされた(Tech-On!関連記事5同6)。その後も,業界首位の松下電器が大型投資で生産能力を拡大し,圧倒的なシェアを獲得する一方で,パイオニアは逆に生産を縮小していく。事業方針も「シェアは追わずに高付加価値」路線へ転換(Tech-On!関連記事7)。2007年10月には,生産ラインの一部の稼働を停止し,検討していた新工場の建設も見送る方針を明らかにした(Tech-On!関連記事8)。

 米DisplaySearch社の調査によれば,2007年10月~12月期のパイオニアの世界市場におけるPDP(パネル)の出荷枚数シェアは3.2%,プラズマ・テレビの売上高シェアは6.3%(Tech-On!関連記事9同10)。前年同期に比べてPDPの出荷は約4割,プラズマ・テレビの売上高は約3割,落ち込んだ。代表取締役社長の須藤民彦氏は,高い技術力が販売増につながらない状況について2007年10月末,「こちらの提案する価値が消費者に受け入れられていない。価値を認めてもらえるような体制にするなど,自分たちのあるべき姿を模索している」と話していた。

《続報》
パイオニア,カーエレ事業中心に構造改革
パイオニアのPDP生産撤退と事業説明会における一問一答

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