「我々は問題を解決した。開発者は自作のソフトウエアをiPhoneのユーザーに提供できる」。米Apple Inc.は2008年3月6日(米国時間),米クパチーノ市の本社で報道機関向けのイベントを開き,同社の携帯電話機「iPhone」と携帯型マルチメディア・プレーヤー「iPod touch」上で動作するソフトウエアをサードパーティが開発するためのSDK(software development kit)を公開したと発表した(発表資料)。公開されたSDKはβ版。Apple社は当初,iPhone向けSDKを2008年2月に公開するとしていたが,やや遅れた。
Apple社はSDKに合わせ,サードパーティ製ソフトウエアに対応するiPhoneとiPod touch向けのファームウエアの新バージョン「iPhone 2.0 software」のβ版も公開した。正式版は6月に出荷する予定で,iPhoneのアップグレードは無償だが,iPod touchはいくらかの追加費用を設定する。 Apple社が提供するオンライン店舗からサードパーティ製のソフトウエアを直接購入する「App Store」機能や,企業向けアプリケーションのためのセキュリティ機能を追加した。
Apple社はiPhone SDK自体を無料で提供するが,サードパーティが開発したソフトウエアの配信はApple社に限る。同社が提供する配信機能を利用するためにサードパーティは「iPhone Developer Program」に参加する必要があり,Apple社に費用を支払う必要がある。この費用は消費者向けソフトウエアの場合は,年間99米ドル,特定企業向けの専用ソフトウエアの場合は年間299米ドルである。さらにApple社は販売されたソフトウエア配信に際し,その価格の3割を徴収する。発表イベントで同社CEOのSteve Jobs氏は「ここから利益を上げるつもりはない」と述べているが,同社のこうした対応は議論を呼びそうだ。
さらに今回,シリコンバレーの有力なベンチャー投資企業Kleiner Perkins Caufield & Byers社(KPCB社)がiPhoneやiPod touch向けのアプリケーション及びサービスを開発する企業に「iFund」と呼ぶ1億米ドルの投資ファンドを設けたと発表した(発表資料)。イベント会場の壇上に招かれた同社,PartnerのJohn Doerr氏は「こうした有力なプラットフォームはベンチャー投資家が支援するべきだと思う。米Google社を設立するために2400万米ドルの投資が必要だったが,今回の投資は4つのGoogle社を設立できる金額である」と述べた。