図1:タンデム型の色素増感型太陽電池の概略図(左)と,実際の電池の発電部(右)
図1:タンデム型の色素増感型太陽電池の概略図(左)と,実際の電池の発電部(右)
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 産業技術総合研究所(産総研)は,太陽光に対するセルの光電変換効率が11.0%に達するタンデム型の色素増感型太陽電池を開発した(発表資料)。これまでの最高性能を上回ったとする。タンデム型とは,2種の色素増感型太陽電池を重ね合わせる形態。今回は透明度の高いTiO2電極を作成し,これを上部の電池に用いることで高効率化した。

 タンデム型の色素増感型太陽電池は,通常の単セル型太陽電池より広範囲な波長の太陽光を利用できる。今回の開発品では,上部の電池にレッドダイ(N719),下部の電池にブラックダイ(N749)と呼ばれる増感色素を用いた。上部の電池は可視光領域の光を利用し,高い電圧を発生する。下部の電池は可視光より波長の長い近赤外光から赤外光を利用して,電圧は小さいが大きな電流を発生する。

 タンデム型では,上部の電池は可視光を吸収しながら近赤外光を損失することなく透過させる必要がある。今回は新しい製造法で,透明度の高いTiO2電極を作成した。下部の電池では,粒子径の異なる半導体膜を多重に積層する構造を用いた。これにより,光子を内部に閉じ込めて外部に逃がさないようにする「光閉じ込め」効果を大きくし,電流を向上させた。電圧を向上させるために,リーク電流を抑制する手法も開発した。

 今後,高い効率を維持しながら形状や製造プロセスの簡略化と低コスト化を図り,実用化を目指す。また,今回の開発品では単セル型電池に向けた色素を用いているが,タンデム型電池に最適な色素を開発することで,光電変換効率の改善が期待できるとする。特に,長波長側の光を効率よく利用する新規増感色素の開発を進めるという。

 産総研は今回開発した技術を,2008年3月29~31日に山梨県甲府市で開催される電気化学会第75回大会で発表する。

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図2:下部の電池で用いた「光閉じ込め」構造の概略図
図2:下部の電池で用いた「光閉じ込め」構造の概略図
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図3:上部の電池と下部の電池を重ね合わせるタンデム型で,太陽光に対するセルの光電変換効率は11.0%に達する
図3:上部の電池と下部の電池を重ね合わせるタンデム型で,太陽光に対するセルの光電変換効率は11.0%に達する
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