図●NANDフラッシュ・メモリの価格の推移(2006年第2四半期〜2007年第4四半期)
図●NANDフラッシュ・メモリの価格の推移(2006年第2四半期〜2007年第4四半期)
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 2007年秋以降,NANDフラッシュ・メモリの価格が下落している(右図)。NANDフラッシュ・メモリの需要の大きな柱の一つである携帯型音楽プレーヤ向けが不振で,需要と供給のバランスが崩れたからだ。最大市場である米国で,携帯型音楽プレーヤは需要が一巡し,販売台数が伸びていない。同様に日本市場も普及率が高まったことや携帯電話機で音楽を聴くユーザーが増えたことで,2008年の販売台数はマイナス成長になりそうだ。

 世界市場で約5割のシェアを持つ米Apple Inc.の「iPod」シリーズは,携帯電話機の「iPhone」を加えても,2008年前半は前年並みの台数に落ち着きそうだ。ただし,1台当たりのNANDフラッシュ・メモリ搭載容量は大幅に拡大した。「iPod touch」で32Gバイト搭載機,iPhoneで16Gバイト搭載機,「iPod shuffle」で2Gバイト搭載機が新しく発売され,また最も売れている「iPod nano」は2Gバイト搭載機がなくなり4Gバイト搭載と8Gバイト搭載の2機種に集約された。2007年までは台数の伸びと搭載容量の伸びがダブルでNANDフラッシュ・メモリ需要をけん引したが,2008年は搭載容量の伸びに頼ることになりそうだ。

携帯電話機にGバイト・クラスを搭載

 携帯型音楽プレーヤ以外の用途はどうだろうか。

 デジタル・カメラの生産台数は非常に好調に伸びているので,そこに使われるメモリ・カードの枚数も急増している。さらにカード1枚の容量も順調に増えている。カード1枚の平均容量は,2006年から2007年で約1.8倍に拡大した。これはNANDフラッシュ・メモリの価格下落が続いているおかげで,1年もすれば同じ値段でより大容量のカードが購入できるからだ。この傾向はUSBスティックも同様だ。2008年もメモリ・カードとUSBスティックの容量は拡大を続ける見通しだ。

 さらに2008年は携帯電話機がNANDフラッシュ・メモリの需要をけん引する。携帯電話機向けNANDフラッシュ・メモリ需要は,大きくプログラム・コードの保存用とデータ保存用に分けられる。そのうちデータ保存用は,携帯電話機に内蔵する場合とスロットを備えてカードで対応する場合がある。搭載するカメラの画素数も上がり,音楽や動画を保存することも考えるとデータ保存用に大容量のメモリが必要になってきている。カード・スロット装備ならカードを取り替えればいくらでも容量が増やせるが,内蔵する場合,プログラム・コード用と限られた領域を奪い合うことになり,保存できるデータが少なくなってしまう。そこで2007年に1Gバイトのデータ保存用メモリを別途搭載した機種が発売された。2008年は2Gバイトに増え,機種によっては8Gバイト搭載モデルも発売される。カードであれ内蔵であれ,どちらにせよNANDフラッシュ・メモリの需要は増えることになる。

パソコン用途は2009年以降に期待

 2008年のパソコン用途は限定的になりそうだ。期待は大きいが,現在はSLC(single-level cell)を利用しているため,パソコン本体の価格が高くなり過ぎる。Apple社が2008年1月に「MacBook Air」を発売,2月には中国Lenovo Group Ltd.が薄型の「Think Pad X300」を発売した。NANDフラッシュ・メモリを利用したSSDは,HDD機に比べると5万~10万円ほど高い。まだ一部のユーザーしか購入しないだろう。2008年のNANDフラッシュ・メモリの需要を見る上では,台湾ASUSTeK Computer Inc.の「EeePC」に代表されるような低価格パソコンの方が,影響が大きいかもしれない。EeePCは1台当たり2G~8Gバイトを搭載する。

2008年後半は供給不足も

 これまで述べたように,2008年のNANDフラッシュ・メモリの需要は,ビット換算で前年に比べておよそ倍になる見通しだ。2005年,2006年くらいまでは前年比で約3倍に拡大していたことからすると決して多くない。しかし,それ以上にメーカーの設備投資が絞られることになりそうだ(各メーカーの投資動向は,本シリーズの第4回目で述べる)。東芝が大規模な投資を発表したことで,供給過剰を予想してしまいがちだが,東芝以外のメーカーが投資を抑えていることで,2008年後半はNANDフラッシュ・メモリの需要の盛り上がりとともに供給不足になる可能性が高い。