パソコンをはじめとするデジタル家電が悩む熱問題に対して,MacBook Airではどのように対処しているのか。熱設計を専門とする技術者の協力を得て,その熱設計の考え方を探った。見えてきたのは,ユーザーに熱を感じさせないことに注力した設計である。空気を使って熱を運ぶ単純な放熱方法を採用したり,熱源との間に空間を設ける(空気をはさむ)ことで不要な熱を伝えないようにしたり,といった方法を採っている。具体的には,(1)薄型ファンの採用と通気口の位置,(2)マイクロプロセサなどの熱を直接筐体に伝えない放熱機構,(3)電池からの熱に対する配慮などに,MacBook Airの熱設計の特徴が現れている。

熱を感じさせない配慮

 ノート・パソコンの中で最も発熱が問題となるのは,マイクロプロセサである。MacBook Airが採用するとみられる米Intel Corp.の1.6GHz動作の「Core 2 Duo」で4Mバイトの2次キャッシュ・メモリを内蔵したノート・パソコン向け品の場合, thermal design power(最大消費電力に相当)は17Wである。MacBook Airの外形寸法を勘案すると,放熱の面で特別に厳しい状況ではないようだ。
 問題は筐体全体がアルミ合金製である点だ。全体に熱が伝わりやすいため,発熱部品から筐体のどこか一部に熱が伝わることで,パーム・レストなどユーザーが熱を感じやすい部分が熱くなる可能性がある。MacBook Airの熱設計には,いかにユーザーに熱を感じさせないようにするかについて配慮した形跡が見受けられる。

 我々がMacBook Airを短時間試用した限りでは,利用中に筐体の温度上昇が気になることはなかった。はやる分解班が本体をすぐに分解してしまったため,使用時の発熱状態や消費電力は実測していない。

ファンの存在を隠す


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 MacBook Airの熱設計のうち,最初のポイントとなるのが本体の背面,ヒンジ部下に配置した通気口である。薄型ファンを採用し,背面から外気を吸い込み,熱源で温まった空気をやはり背面側に排出する。この際に温まった空気の熱を,筐体になるべく伝えないように工夫してある。

 技術者は「通気口を本体背面側に置くと,排気がユーザーに当たりにくく,ファンの騒音も聞こえにくい」とする。この点は独自の薄型Liポリマ2次電池を採用した利点と言える。日本メーカーの薄型ノート・パソコンでは,汎用の2次電池を使いつつ本体手前側の薄さを実現するため,あるいは使いやすさを考慮するため,本体背面側に2次電池を搭載する場合が多い。その場合,通気口は本体側面に配置せざるを得ない。通気口の面積が不足して熱的に苦しくなったり,温まった排気が利用中のユーザーの手に触れて,不快を感じさせたりするといった問題が生じやすい。

排熱を筐体に伝えない