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 2007年の世界の電子機器市場はおおむね好調だった。後半には,サブプライム・ローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題で米国市場が失速したものの,世界全体では大きな落ち込みにならなかった。その証拠に,日本のエレクトロニクス企業大手9社(日立製作所,東芝,三菱電機,NEC,富士通,ソニー,松下電器産業,シャープ,三洋電機)のうち8社が,10月~12月期に前年同期比で増収だった。また同様に9社中7社が増益だった。必ずしも家電製品が好調というわけではなく,重電や産業機器が業績を支えている企業も多いが,米国のサブプライム問題の影響で世界全体が不景気だったのであれば,9社中8社も増収にはならなかっただろう。

 ただし,2008年に入っても,依然としてサブプライム問題が解決しておらず,電子機器市場には不透明感が漂っている。北京オリンピックを控えているが,電子機器の生産は今のところ盛り上がりに欠ける。

Eee PCは販売好調

 それでも新興国を中心に需要がおう盛であることから「日経マーケット・アクセス」では,2008年のパソコン生産台数は前年比7.2%増,携帯電話機は同10.3%増と,半導体需要をけん引する二本柱をともに10%前後の成長と予測した(下図)。薄型テレビは,同36.4%増と,2007年の57.3%増に比べて鈍化するものの依然として高い成長が期待できる。デジタル・カメラは同13.0%増と2ケタ成長を維持する見通しだ。

世界の電子機器の生産台数推移

 パソコン市場では2007年に,台湾Asustek Computer, Inc.の「Eee PC」が話題を呼んだ。2007年10月に台湾,北米市場で発売され,2008年2月には日本でも発売された。仕様により価格は異なるが,台湾,北米市場では最廉価版で299米ドル,日本での価格は5万円を切っている。HDDの代わりにNANDフラッシュ・メモリを搭載しているため記憶容量は4Gバイトと少ないが,ノート型パソコンとして考えれば,価格はかなり安い。そのため販売が好調で,月産30万台ペースが続いている。

 これを契機にパソコンの低価格化が進めば,2008年のパソコン全体の生産台数の伸びは予測した前年比7.2%増よりも上に振れる可能性が高い。今回の予測は,デスクトップ型パソコンの成長鈍化を受けて,控えめに見積もったものだ。

 携帯電話機市場で,2007年に注目されたのは,米Apple Inc.の「iPhone」だ。タッチパネルによる操作性が今までの携帯電話機にはない先進性の高いものだった。このため,他の携帯電話機メーカーがこぞってタッチパネルを搭載した機種の開発に力を入れている。iPhoneは2007年下期だけで約500万台を生産しており,2008年通年では約1000万台の生産が見込まれる。しかし,他の携帯電話機メーカーが対抗機種を発売することで競争が激しくなり,iPhoneの生産台数は計画を下回る可能性がある。

 いずれにせよ携帯電話機の世界需要は,インドなど新興国で大幅に台数が増え,iPhoneに代表される新しいタイプの端末が先進国需要を刺激することで,2008年も堅調に増え続けるだろう。

メーカー間で明暗分かれるが全体では堅調

 パソコン市場のように米Dell Inc.から米Hewlett-Packard Co.へ首位が入れ替わった例もあれば,携帯電話機のようにフィンランドNokia Corp.がトップの座をより強固にした例もあり,メーカーごとに明暗が分かれたが,全体として見れば2007年の電子機器の生産台数は好調だった。そして,2008年も生産台数は引き続き堅調な増加が見込まれる。

 次回から,電子機器市場の動向を基に,メモリーを中心に半導体市場の2008年見通しをまとめる。