HD DVDからの完全徹底を発表する東芝の西田 厚聰社長
HD DVDからの完全徹底を発表する東芝の西田 厚聰社長
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 東芝は,HD DVD規格に基づくあらゆる製品の開発・生産から完全に撤退する。西田 厚聰社長が記者会見で発表した。2006年3月31日に東芝のHD DVDプレーヤー発売で幕を開けた次世代DVD戦争は,2年を経ずして東芝が自ら幕をおろす事になった。

 西田社長は,事業撤退を決断した最大の理由として,Warner社の陣営離脱を挙げた(関連記事)。「寝耳に水に近かった」。この結果,小売店が相次ぎHD DVD機器の取り扱い中止を発表。「Warner社が離脱した後,我々が細々と事業を続けるのは,消費者のためにはならず,勝ち目もないと判断した」(西田氏)。

 新規のHD DVD機器の開発は即座に停止する。レコーダーやプレーヤーの新製品の開発,生産は中止。製品の流通チャネルへの出荷は徐々に縮小し,2008年3月末をメドに事業を終息させる。パソコン向けHD DVD装置の事業も同じく終息させる。

 既にHD DVD機器を購入したユーザーに対しては「万全のサポート体制をとる」(西田氏)。具体的には,HD DVD機器向けコール・センターを強化するほか,補修用部品は8年間保有してアフター・サービスを継続する。HD DVD記録ディスクについては,一定期間ディスクを提供できるよう,光ディスク・メーカーと協議する。東芝は現在,光ディスクを製造・販売していないが,同社オンライン・ショップでの販売も検討するという。国内以外のプレーヤーについても,個々の地域の事情に即してユーザーに対応する。

 今後のAV事業戦略について,東芝は詳細を明らかにしなかった。「デジタル・コンバージェンス時代にふさわしいAV戦略について,NANDフラッシュ・メモリ,小型HDD,画像処理技術,無線技術,暗号処理技術を生かし,中長期的戦略を構築する」(西田氏)。Blu-ray Disc対応機器を生産,販売する計画はないという。

 Universal社, Paramont社, Dreamworks社, 国内コンテンツ事業者,Microsoft社, Intel社,HP社とは,今後も良好な関係を継続する。共同開発で培った技術を生かした事業の可能性を検討する。