東京エレクトロンは,シャープと共同で設立した太陽電池製造装置の開発会社の詳細を発表した(Tech-On!関連記事)。社名は東京エレクトロンPVで,薄膜Si型太陽電池向けのプラズマCVD装置の開発のみを手掛ける。開発した装置は,東京エレクトロンが製造して販売する。初号機の出荷は2009年を予定する。
 東京エレクトロンPVの資本金は5000万円で,出資比率は東京エレクトロンが51%,シャープが49%である。今回の合弁会社設立については,2007年夏に両社が話し合いを開始したという。

 シャープは,年間生産能力が1GWと大規模な薄膜Si型太陽電池の新工場を大阪府堺市に建設して,2010年3月までに稼働を始める計画である。合弁会社が開発した製造装置は,この工場の主力商品となるモジュール変換効率が10%以上と高いトリプル型構造の薄膜Si型太陽電池の製造に使う。

 複数の膜を重ねるトリプル型の製造には,生産性の高いプラズマCVD装置の開発がカギを握る。シャープは,新工場建設の発表時に「トリプル型を高い生産性で量産するための製造装置を実現した」としていた(Tech-On!関連記事)。その上で,今回東京エレクトロンと組んだのは,シャープの自社開発した技術に東京エレクトロンの技術を加えることで,トリプル型の生産性をさらに高めつつ,製造装置の完成時期を早めて,「グローバル競争に勝ち抜くため」(シャープ 広報担当者)である。

 太陽電池の製造には,日本や欧州だけでなく,中国や台湾,さらにはインドなどから新たな参入者が続々と現れている。こうした企業は,製造装置を一括供給する製造装置メーカーと組み,製造コストの引き下げを狙っている(Tech-On!関連記事)。インドでは,これまでの半値で製造装置を一括提供する製造装置メーカーも現れた(Tech-On!関連記事)。今回の合弁会社設立は,「日本メーカーがターンキー・ソリューションに対抗する戦略の一環」(太陽電池の技術者)であり,今後その成否か注目を集めるだろう。

 東京エレクトロンはこれまで,主要な太陽電池の学会に担当者を欠かさず派遣して情報収集するなど,太陽電池の基礎研究を続けながら,太陽電池事業への進出の機会を狙っていた。太陽電池関係者は今回の合弁会社設立について,「東京エレクトロンは,ここで乗り遅れると参入が難しくなるという状況で,いちばん良い客をうまくつかまえた」と評する。1GWと大規模なシャープの新工場に製造装置を納入できるほかに,技術の習得も可能になるからである。東京エレクトロンは「まだ詳細は決まっていないが,将来的には他社にも製造装置を販売したい」(広報担当者)とした。

日経マイクロデバイスは,2008年3月号で「インドの製造力~中台韓に続く新たな脅威に~(仮)」と題して,太陽電池を中心とするインドの電子デバイスの製造状況をお伝えする予定です。

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