図1:スカパーJSAT 代表取締役社長の仁藤雅夫氏
図1:スカパーJSAT 代表取締役社長の仁藤雅夫氏
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図2:現在JSATと宇宙通信が所有する通信衛星。黒い衛星は宇宙通信,青い衛星はJSATが所有している。110度CS放送サービスに使用している「N-SAT-110」の予備衛星を,2011年にB-SAT社と共同で打ち上げる予定になっている。また,124/128度CS放送には「JCSAT-4A」と「JCSAT-3A」を使用していて,「JCSAT-R」が予備衛星の役割を果たしている。
図2:現在JSATと宇宙通信が所有する通信衛星。黒い衛星は宇宙通信,青い衛星はJSATが所有している。110度CS放送サービスに使用している「N-SAT-110」の予備衛星を,2011年にB-SAT社と共同で打ち上げる予定になっている。また,124/128度CS放送には「JCSAT-4A」と「JCSAT-3A」を使用していて,「JCSAT-R」が予備衛星の役割を果たしている。
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 スカパーJSATは2008年2月14日に定例会見を開き,契約者数が伸び悩むCS放送事業における今後の戦略を明らかにした。

 スカパーJSATの子会社であるスカイパーフェクト・コミュニケーションズが運営する多チャンネル放送サービスの個人契約者数は,過去14カ月連続(2006年12月末~2008年1月末)で360万台にとどまっている。2002年7月に開始した110度CS放送サービス「e2 by スカパー!」は,BSデジタル放送とアンテナを共有でき,視聴に必要なチューナが多くのデジタル・テレビに標準装備されていることから契約者数が増え続けている(Tech-On!関連記事)。しかし,個人契約者の約83%を占める124/128度CS放送サービス「スカイパーフェクTV!」の契約者数が減少し続けているため,e2 by スカパー!による増加分が相殺され,トータルでの契約者数は増えない形だ。

 前回の定例会見においても,スカイパーフェクTV!の解約率を押さえつつe2 by スカパー!で新たな顧客を獲得するための戦略が語られたが,今回はその戦略の内容がさらに具体的になった。

124/128度CS放送は,2009年秋までに50チャンネルをHD化

 スカイパーフェクTV!に関しては,まず2008年秋をめどに映画やアダルトといったPPV(ペイ・パー・ビュー)用のコンテンツなどを中心に10チャンネル程度をHD化するとした。現在,HDに対応したチャンネル数はゼロ。さらに,2009年秋をめどとして,「ベーシックチャンネル」と呼ばれる基本料金のみで視聴可能なチャンネルを中心に,40チャンネル程度をHD化する。

 HD化は,デジタル・テレビの普及による影響もあり,多くの契約者から要望を受けていたという。スカイパーフェクTV!の現行ユーザーがHD放送を見るためには,HD放送に対応したセット・トップ・ボックス(STB)を新たに3万円程度で購入する必要がある。ただし,「今後レンタル制度や現行ユーザーに有利な料金体系などを検討していきたい」(スカパーJSAT 業務管理部門 広報IR部長の新本朋斉氏)。

 スカパーJSAT 代表取締役社長の仁藤雅夫氏は,合計で約50となるHD対応チャンネルを「圧倒的な数」「(ケーブル放送などの)追随を許さない規模」であるとし「しばらくは,この規模のHD放送を提供できるのはスカパー!しかない」との自信を示した。ただし,HD化が始まる2008年秋までの期間は「我慢の時期」と表現した。

宇宙通信の子会社化は,110度CS放送サービスの強みに

 e2 by スカパー!は,前述のように視聴に必要なチューナがデジタル・テレビに標準装備されているため,テレビの購入と同時に店頭で契約をするケースが多い。しかし,小売店から加入手続きの複雑さを指摘されることが多かったため,今後は手続きの簡略化を図り,より気軽にサービスを申し込むことができるようにする。また,2008年4月までにHD対応チャンネルの数を現在の4チャンネルから7チャンネルへと増やす。

 会見では,前日に発表があったスカパーJSATによる宇宙通信の子会社化に関する話題も取り上げられた。e2 by スカパー!で使用している通信衛星「N-SAT-110」は,JSAT(2007年4月にスカパーJSATが子会社化)と宇宙通信が共同で所有しているため,今回の子会社化によって同一グループ内で独占的に使用できる。また,スカイパーフェクト・コミュニケーションズがJSATと宇宙通信に払っている衛星の使用料(通称トランスポンダ代)もグループ内で循環する。

 このほか,衛星の管理体制を集約化してコストを削減できること,事業規模が大きくなることにより衛星メーカーやロケット会社,保険会社に対する営業力が強まることなどを子会社化の利点とした。