早速,「MacBook Air」を開けてみることにする。

 改めてMacBook Airの仕様をおさらいしよう。最大の特徴は,その薄さだ。最薄部が約4mm,最厚部でも約19.4mm。最薄部と最厚部でこれほど厚さが違うのは,筐体底部のアルミ合金板がおわん状に湾曲しているためである。最厚部の19.4mmという数字は,Apple社によれば「2008年1月時点で生産・販売されているノート・パソコンの中では最も薄い」という。

図1 13.3型液晶パネルを備えるMacBook Air
図1 13.3型液晶パネルを備えるMacBook Air (画像のクリックで拡大)

 過去にはMacBook Airより薄いノート・パソコンは存在した。例えば,シャープのノート・パソコン「Mebius MURAMASA」は厚さが16.6mmだった。ただMacBook Airを目の前にすると,19.4mmという数値以上に「薄さ」を実感する。これは,A4ノート・パソコン並みという筐体の大きさに加え,この湾曲構造のデザインが寄与したものだろう。

図2 薄さが強調されたデザイン
図2 薄さが強調されたデザイン (画像のクリックで拡大)

 基本的な処理性能での妥協はない。マイクロプロセサは米Intel Corp.の1.6GHz動作の「Intel Core 2 Duo」,主記憶容量は2Gバイトである。液晶ディスプレイは画素数が1280×800の13.3型で,フル・サイズのキーボードを備える。無線機能として,IEEE 802.11n規格のWi-FiおよびBluetooth 2.1に対応する。電池の駆動時間は,無線LANを有効にした状態で「5時間程度」をうたう。ただし,無線機能を除くインタフェース類は貧弱である。光ディスク装置はなく,USB接続端子は一つのみである。有線LAN端子はない。

 分解班はまず,筐体底部にあるメイン基板および2次電池モジュールの観察に手を付けた。底面を固定するネジを,精密ドライバーで外していく。「2次電池の交換は店頭で行う」という特異な仕様を持つMacBook Airは,店頭での分解が容易になるよう設計されているらしい。ネジを外しただけで筐体底部はいとも簡単に開いた。

図3 +ネジを外すと,アルミ合金板がひとりでに浮き上がる
図3 +ネジを外すと,アルミ合金板がひとりでに浮き上がる (画像のクリックで拡大)
図4 底部の左側,面積の半分以上を占める黒い物体が2次電池モジュールである
図4 底部の左側,面積の半分以上を占める黒い物体が2次電池モジュールである (画像のクリックで拡大)

 「うわあ・・・」  分解班の面々からため息が漏れる。現れたのは,底面の面積の2/3を占めようかという大柄な2次電池モジュールだった。Liポリマ2次電池である。Apple社以外の社名は書かれていない。電圧は7.2V,電池容量は37Whである。

図5 2次電池モジュールの表側。多言語でびっしり注意書きが並ぶ
図5 2次電池モジュールの表側。多言語でびっしり注意書きが並ぶ (画像のクリックで拡大)
図6 2次電池モジュールの裏側。上下に並ぶ丸い穴が開いた構造物は,クッションの役目を果たすとみられる
図6 2次電池モジュールの裏側。上下に並ぶ丸い穴が開いた構造物は,クッションの役目を果たすとみられる (画像のクリックで拡大)

 外された底面のアルミ合金板は厚さが1mmほど。強度を高めるためのリブ構造はなく,プレス品とみられる。アルミ板の縁は面に対して垂直に立つ構造になっており,この構造が剛性を高めているとみられる。

 放熱用ファンの隣にある1.8インチHDDは,韓国Samsung Electronics社製の80Gバイト品である。1.8インチHDDは,ノート・パソコン向けで一般的な2.5インチHDDより高価だが,実装面積が小さいので,その分2次電池モジュールを大きくできる。

図7 1.8インチHDDはSamsung Electronics社製
図7 1.8インチHDDはSamsung Electronics社製 (画像のクリックで拡大)

 放熱板を外すと,グリースに覆われたチップセットが現れた。

図8 2次電池,HDD,放熱板を外し,メイン基板が露出した
図8 2次電池,HDD,放熱板を外し,メイン基板が露出した (画像のクリックで拡大)

 このうち,右側のチップが「Intel Core2 Duo」とみられる。このチップのパッケージはIntel社がMacBook Airのために開発したもので,標準品よりも実装面積を60%ほどに抑えたという。特注パッケージによる面積の削減が効いたためか,メイン基板の他の部品の実装密度はそれほど高くない。

図9 基板の右下にあるチップがCore 2 Duoとみられる
図9 基板の右下にあるチップがCore 2 Duoとみられる (画像のクリックで拡大)

 チップセットは黒い放熱板で覆われていた。チップセットが発する熱は,まず放熱板に拡散した後,右隣にある薄型ファンで排気熱として逃がすほか,放熱シートを通じて筐体底面のアルミ合金板やキーボード・モジュールに拡散させているとみられる。

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