MacBook Airの黒い手提げ袋
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マット調の高級感のある外箱
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B4判用の封筒にすっぽり収まる薄さ
B4判用の封筒にすっぽり収まる薄さ
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 2月12日18時10分。携帯電話が鳴っている。画面には「00」で終わる切りのいい番号。馴染みはないが,どこかで見たような。気が付けば電話は切れていた。こちらからかけ直すと,女性の声が流れ出す。「アップルストア銀座です…」。しまった。ついに入荷したのか。つながったままの電話からは,いつものように録音済みの音声が「お待ちください」と繰り返し流れてくるばかり。いつまでたっても担当者に切り替わらない。「すぐに店に行ったほうがいいよ」。同僚の声に押され,コートを羽織る。「とりあえず行ってきます」。入荷したか確信を持てないまま,小走りに社を後にした。

 先方からの電話にすぐ出られなかったのは,気がゆるんでいたからに違いない。2月に入って,分解班は休日を含め連日アップルストア銀座の状況をチェックしていた。「MacBook Airは入荷しましたか?」「いえ,まだです」「いつ頃になりそうですか」「全くわかりません」。毎度変わりばえのしないやりとりに,そろそろ嫌気がさしてきた。どうやら,予約分の出荷で手一杯で,店頭で普通に買えるまでしばらくかかりそうだ。アップルストアは,入荷すれば電話で通知してくれるサービスを用意していた。我々もずいぶん前にお願いしたので,追々連絡が入るだろう。それまではじっと我慢。どっしり構えているしかない。そう心を切り替え,アップルストア詣でを止めたその日に,電話がかかってきたのだから間が悪い。

 わざわざ店頭まで出向かざるを得なくなったのは,初動が遅かったからである。諸般の事情で,我々がMacBook Airを注文したのはMacworld Conference and Expoの数日後だった。Apple社のオンラインストアで頼んだところ,出荷は2月中旬以降になるという。量販店でも予約したものの,いつ手にはいるか見当も付かない。Apple社の日本法人に聞いても,「本社の管轄なので,いつ出荷されるのか,こちらでは何とも…」と,はなはだ心許ない。一か八か打って出たのが,おそらく日本で一番最初に入荷するであろう,アップルストアの銀座店で購入する方法だった。当初は,電話で在庫を確認してなどと甘く考えていたが,何度かけても担当者につながらない混雑ぶりに業を煮やし,それならばと連日店舗を訪れる愚直な手に出た。

 18時30分。雨上がりの銀座は,連休開けの夕方にも関わらずかなりの人出である。足早に人混みをすり抜けてたどり着いた店先で,いつもは店舗案内の冊子を配っている女性が,黒く平べったい箱を掲げている。表面には二枚の板を組み合わせたような絵が。すれ違いざま聞いた。「MacBook Air入荷したんですか」「はい。今,Macの担当者を探してきますね」。

 20時45分。ようやく手に入れた喜びもつかの間,購入したMacBook Airは既に原型をとどめていない。我々の目的は,タイトルにもあるようにMacBook Airのハードウエアの内部を探ることである。その詳細は,後に続く記事をお待ちいただきたい。

 ここまで長々と入手の経緯を書いてきたのは,製品の出荷に関するApple社の態度に大いに疑問を感じたからである。サプライチェーンマネジメント(SCM)が発達した今日,自社製品がいつどれくらいの量でどこに出荷されるのかをApple社が把握できないわけがない。発売日をはっきりさせないのは同社なりの思惑があってのことだろうが,待たされる身にもなってほしい。社内でApple贔屓と揶揄される筆者もちょっと首を傾げる一件だった。

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