図1
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図2
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図3
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図4
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図5 ハンド・グリップを回転させて握ったところ。
図5 ハンド・グリップを回転させて握ったところ。
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図6
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図7
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図8
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図9
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 韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が2008年5月に発売する予定のフルHD(1080/30pもしくは1080/60i)対応ビデオ・カメラ「SC-HMX20」。既報の通り,用いた撮像素子は,ソニーの超高速CMOSセンサ「IMX017CQE」と考えられる。

 ただし,記者向けプレゼンテーションでは「proprietaryなCMOSセンサを採用」という発言もあった。Samsungグループの米国広報に調査を依頼しているので結果が分かり次第,続報したい。なお既報では,SC-HMX20の開発元をハッキリ記さなかったが,Samsung Electronics社であることを確認した。

平易でカッコいい


 筆者は短時間ながら,SC-HMX20の展示機を記者会見場やブースで試用した。そして仕様やユーザー・インタフェース,外観などから「もしかしたら日本勢のフルHD機とそう変わらないくらい売れるかも」と感じた。自分が撮ったフルHD動画の画質を大画面のテレビで確認したわけでもないので,筆者の予想が外れる可能性も大きいが,ここではあえてそう感じた理由を記したい。

 一つは,商品づくりで「冒険」しておらず,それが故に多くの消費者が使いやすいこと。SC-HMX20のユーザー・インタフェースは,既存のビデオ・カメラと大差ない。撮影した動画や静止画を,タブを用いた画面で一覧できるなど,ユーザーを戸惑わせる要素があまりない(図1)。

 確かにISO3200という高感度で動画・静止画とも撮れるといった,これまでのビデオ・カメラにない機能を備えてはいるものの,撮影方法自体を変えようとはしていない(図2)。この点はカシオ計算機のデジタル・カメラ「EX-F1」とは大きく異なる。EX-F1は「スローライブ」などの撮影モードを備えている(EX-F1の狙いを詳述した記事同2)。

 もう一つは,見る人の主観に大きく左右されるが,外観デザインが優れていること。Samsung Electronics社の経営者は数年来,商品の外観デザインを維持・向上しようと血眼だが,その成果がSC-HMX20にも現れているのではないか。例えば,クレイドルに本体を少し傾けて設置するという「くせ球」を使っているのに,なぜか「カッコいいでしょ!!」といった押しつけがましい印象を筆者は受けなかった(図3)※1。

※1 筆者は男性であり,こうした感想を記す上で適任でない可能性があります。一般にビデオ・カメラは,スチル・カメラよりも女性受けするデザインが求められているといわれているからです。デザインに対する分析を希望する声が多ければ,後日実施したいと考えております。

 もう少し客観的に考えても,SC-HMX20の外観デザインは高く評価できそうだ。まず独自性が高い。筒状の外観は日本メーカーの商品では見かけないものである。次に,アイデアもののハンド・グリップ回転機構を備えている(図4~5)。子供が被写体の時に多用するローアングル撮影を容易にするもので,利便性が高い。さらに,この外観は一機種限りのものでない。ハーフHD(720/59.94p)対応のビデオ・カメラ「SC-HMX10」に似ている。ドイツ車の多くやキヤノンのデジタル・カメラ「IXY Digital」などと同様,ブランドの認知度を高めやすくする効果があるだろう。

松下っぽい分解展示


 一方,デジタル・カメラ関連では,一眼レフ機「GX-20」用CMOSセンサのほかに,「NV24HD」の内部を公開していたことが目を引いた(図6~9)。NV24HDは,HDMI端子や有機ELパネル,光学式手ブレ補正を備えた機種である。画像処理LSIに「DRIM」という名前を付けて,画質向上に寄与しているとアピールしていた。実装技術面では,内蔵する金属板が多いこと以外,特殊な要素はなさそうだった。

 Samsungグループによる分解展示は,照明や部品の配置が松下電器産業によく似ている。これをあげつらうこともできるのかもしれないが,そんなことより私は「迫力」を感じる。「良いものはどんどん取り入れる」というアグレッシブさが明確に現れているからだ。これに対し日本のカメラ・メーカーの中には近年,技術説明用のパネル展示さえ取りやめた企業がある。来場者の中には,商材を的確に理解したい流通業者や,協業相手を探す部材メーカーもいる。こうした人々を重視する点でも,日本勢はSamsungグループに後れをとるのだろうか。

家電の販売網に載せる


 このほかSamsungグループはPMA開催中に,米国販売網の再編を発表した。米国におけるデジタル・カメラの販売や出荷管理をSamsung Electronics社系の米Samsung Electronics America's社が担うというものである。これまではSamsung Techwin社系の米Samsung Opto-Electronics America社が担当していた。

 デジタル・カメラ事業においてSamsungグループが掲げる目標は,2010年までに世界トップ3の企業になること。同グループの中核であるSamsung Electronics社は,この目標達成を確実し,かつAV機器事業とのシナジー効果を追求するという大義名分の下,数年前は交流がまれだったSamsung Techwin社への関与を強めている。