フィンランドNokia Corp.とノルウェーTrolltech ASAは2008年1月28日,Nokia社がTrolltech社を買収することで合意したと発表した。Nokia社はTrolltech社の株式を16ノルウェークローネで買い取る。既に発行株式の66.43%に当たる3502万4830株分の株主の同意を得ているという。買収総額はおよそ8億4360万ノルウェークローネ(約1億5000万米ドル)になる。買収は2008年第2四半期中に完了させる。

 Trolltech社の主力製品である「Qt」は,WindowsやLinuxなどのOSに依存しないGUIプログラムを実現するための技術として,広く使われてきた。特にLinuxで人気の高いデスクトップ環境の一つである「KDE」は,Qtを使って実装されている。例えば米Motorola,Inc.はLinuxベースの携帯電話機に,Trolltech社の「mobile Qt」を採用している。またLinuxを採用した携帯電話機向けのアプリケーション・プラットフォーム「Qtopia Phone Edition」,携帯電話機以外の組み込みLinux向けのプラットフォーム「Qtopia」の開発・販売を手がけている。

 Nokia社はTrolltech社を買収することによって,デスクトップと携帯電話機などモバイル環境におけるクロスプラットフォーム戦略をさらに推進できるとしている。Nokia社はTrolltech社の製品を継続して提供すると同時に,改善も続ける。

 英国の調査会社であるOvum,Inc.はこの件に関し,「Nokia社にとって自然な選択だった」とコメントしている。「Nokia社のSymbian OSベースのプラットフォームであるS60にQtが載れば,ユーザー・インタフェースを含むトータルなプラットフォームができあがる。Linuxベースのプラットフォームに対し,競争力が増す」(Ovum社)と指摘した。またMotorola社にとっては,基盤技術の一つをNokia社に握られたことになり,不利に働くと分析している。ただTrolltech社はLiMo Foundationに参加していることから,Nokia社がLiMo Foundationを支援する形となり,携帯電話機向けLinuxの標準を確立する後押しになりうるとも指摘している。