【MEMS2008】コンタクト・レンズをディスプレイ,カメラ,各種バイオ・センサに,米大学がウサギ用に試作
米Washington of Universityは,MEMS 2008でコンタクトレンズに電子回路を形成し,発光ダイオード(LED)を貼り付けた超小型ディスプレイを作製し,ウサギの目に装着する実験について発表した。自動車のフロントグラスに映像を表示するヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)や,眼鏡型のヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)のコンタクト・レンズ版を目指した開発であるという。
同大学は今回,コンタクト・レンズの材料としてPET樹脂を利用し,その上に電子回路を形成した。製造方法の手順は以下の通りである。まず,100μm厚のPET製シートを4インチ・ウエハー状に切断。その上にUVリソグラフ技術とスピンコート技術で主にAuとNiからなる配線層を形成した。この時点でLEDはないが,LEDを配置すべきところに円柱状に穴を形成しておく。PETは70℃以上で大きくゆがむため,プロセス温度を最高で65℃まで抑えたという。
LEDはこれとは別工程で作製した。このLEDは直径320μm,厚み4μmの円柱状に形成してから,周囲の基板をエッチングで除去し,あたかもボタン電池のような形状にする。このLEDはGaAs系で,約4V以上の電圧を印加すると赤色発光する。
LEDの位置合わせはLEDに任せる
配線層を形成したPET製シート上にLEDを配置する工程には,同大学が開発した「自己形成(self-assembly)プロセス」を利用した。具体的には,インジウム(In)系のはんだを70℃で溶かし,それに希塩酸を加えた溶液を作製する。この溶液の中にシートを10秒間浸して引き上げる。次に,シートを蒸留水で洗浄した後,希塩酸を含むエチレン・グリコールの溶液に浸して引き上げる。そして多数のLEDをこのシート上にばら撒く。するとシート上の円柱状の穴にLEDがはまり込む。ここでシートの温度を65℃にまで上げた後,温度をこのはんだが溶ける47℃以下まで下げると,穴の中のはんだがLEDを基板に固定する糊となってLEDが固定される。
ここでLEDの向きが問題になる。仮にLEDが発光面を下向きにして穴にはまり込んだ場合「LEDの表側には電極がなくはんだと結合しない」(同大学)ため,容易にはがせるのだという。すべてのLEDが正しい向きで貼り付くまで自己形成プロセスを繰り返すことになる。同大学によれば,この状態でLEDが発光することを確認できているという。
押し型に入れてコンタクト・レンズを形成
残る工程は,PET製シートをレンズの形にすることである。まず,配線とLEDの貼り付けを済ませたシートに生体と相性のよいPMMAの薄膜でコーティングする。次に,240℃に加熱したコンタクト・レンズの形状をしたアルミニウム(Al)製型にシートを置き,上からプレスをかける。洗浄した後,UVで殺菌すれば出来上がりである。
LEDは最大16個まで1個のコンタクト・レンズに貼り付けた。しかし現時点では,プレスで成型する際にはんだなどが損傷を受けるため,コンタクト・レンズ上のLEDの発光は確認できていないという。
コンタクト・レンズは,ウサギの目に20分間装着しても大きな問題を起こさないことを確認している。「当初はウサギの提供者との契約で20分になった。今後は1日ぐらいつけて安全性を確認したい」(同大学の発表者)。
実現への課題はまだいくつもある。コンタクト・レンズへの給電は,現時点では配線を用いている。今後はこれを眼鏡からなどの電磁誘導によるワイヤレス電力の実現を試みるという。また,LEDの小型化も進めている。小さくすればそれだけコンタクト・レンズ上にたくさん貼り付けられるからである。「現状でLEDの直径を100μmぐらいにすることにはメドが立っている」(同大学)。コンタクト・レンズ上で映像を映してそれが明瞭に見えるのかという問いには「各LEDにレンズを付けて焦点を調整することも研究中」(同)とした。
同大学は「LEDの代わりに,受光素子(PD:photo diode)を貼り付ければコンタクト・レンズがカメラに,グルコース・センサなどにすれば,涙の成分から糖尿病のモニタリングをすることができるようになる」と今後の用途の広がりを強調した。


















