曲げたシートを指で触った場合に電気抵抗が変化する様子を実演
曲げたシートを指で触った場合に電気抵抗が変化する様子を実演
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シートの様子。本来ほぼ透明だが,PEDOT:PSSの歪みセンサの境界に「ホコリなどが入り込んで見えている」(東大・下山研究室)
シートの様子。本来ほぼ透明だが,PEDOT:PSSの歪みセンサの境界に「ホコリなどが入り込んで見えている」(東大・下山研究室)
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 東京大学大学院情報理工学系研究科 教授の下山勲氏の研究グループは,開発中の透明で曲がるシート状の「タッチ・インプット・デバイス」をMEMS 2008で公開した。シートが応力を受けて歪みができると電気抵抗が変化することを利用する。同グループは,有機ELなどを用いたフレキシブル・ディスプレイ上にこのシートを張り合わせて,タッチ・パネル機能を付加することを目指して開発しているという。

 このシートは,PET製基板上に有機半導体のPEDOT:PSSで配線パターンを形成したもの。PEDOT:PSSは正孔(ホール)が移動するp型の半導体で,透明電極に用いられるITOとの比較では,電気伝導度こそ低いが透明度はむしろ高い。また,PEDOT:PSSは低温プロセスで製造でき,やわらかくて曲げやすいという特徴も備える。一方,ITOは曲げに弱いため今回の用途には利用できなかったという。

 透明度は「PEDOT:PSSの中でも材料を選べば90%以上の透過率が得られる。電気抵抗の低さは,配線を厚くして対処できるはず」(同研究室の発表者)という。

 現時点では歪みを感じる「画素」は,寸法が約7mm×5mmと大きい。まだ触ったり曲げたりした場合に電気抵抗が変わることを検証している段階で,ICなどの制御回路は付けていない。