米ABI Research社は,2007年前半に非接触ICカードは普及したものの,「NFC(Near Field Communication)」と呼ばれる近距離無線規格の携帯電話機への取り込みは遅れている,とレポートした(発表資料)。同社は,NFC対応機器の2008年の出荷予想台数を981万台から652万台に下方修正した。

 NFCは,ソニーとオランダRoyal Philips Electronics社が共同開発した13.56MHz帯を使う近距離無線通信技術。通信距離は10cm前後で,非接触ICカードとの通信が可能である。

 ABI Research社によると,乗車券や電子決済向けの非接触通信技術の世界市場規模は,2007年に前年比で15%以上成長したという。同市場の現在の売上高は2億米ドルだが,2013年には8億2000万米ドルまで拡大するとみる。

 一方,NFC対応の携帯電話機は2007年末までに出荷されず,2008年前半の出荷台数も限られたものになる,とABI Research社は予測する。同社は,NFCの普及が当初の予想より遅れるとみており,NFC対応機器の出荷予測を下方修正した。NFC対応機器の従来の予想出荷台数は,2007年が110万台,2008年が981万台だったが,これをそれぞれ65万台と652万台に変更した。

 ただし,通信事業者の間でNFC技術に対する興味は依然として強く,長期的な視点で見れば普及の見通しは変わらないとする。NFC普及のけん引役となるのは,乗車券や電子決済での利用と分析する。