松下電器産業のアメリカ販売会社,Panasonic Consumer Electronics Companyの北島嗣郎社長
松下電器産業のアメリカ販売会社,Panasonic Consumer Electronics Companyの北島嗣郎社長
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 全米で放映されている松下電器産業のキャンペーン「Living in High Definition」は,デジタル・テレビ,デジタル・ムービー,デジタル・スチル・カメラなどのデジタル製品が,いかに家族の絆を復活させるかをCMで描くものだ。

 別記事でも述べたが,これは実に画期的なコンセプトである。これまでデジタル化というものは個人に力を付けることを主眼に進化してきた。機器,コンテンツもパーソナル化が急速に進んだ。ところが,その結果として家族はひとり一人が別々に行動するようにになり,孤立化が進んだ。その流れに棹をさすのが「Living in High Definition」のキャンペーンなのだ。

 実は,このコンセプトは,事実から発想されたというのが面白い。それは,米国の人達は,デジタル製品をいったいぜんたいどのようにつかっているのかという市場調査から始まった。2万ドル相当の前述した製品群を,人種,地域などに応じて選んだ家庭に進呈し,運ばれてきた時から,ケーブルや電源を接続して動作させ,視聴するまでをビデオに録り,インタビューして,行動分析をする。

 「この過程を分析してみると,多くのことが分かりました。松下電器産業がある大阪・門真の技術者が使いやすいと思ってつくったリモコンが,ぜんぜん,使いにくいこととか……」松下電器産業のアメリカ販売会社,Panasonic Consumer Electronics Company北島嗣郎社長は言う。それを次の商品に活かす。

 ここで,実に面白いことに,デジタル製品を使う過程で,「おおい,みんな来いよ!」という感じで,家族が集まり始めたという。カメラでお互いを撮ったSDカードをPDPテレビの大画面で観たりして,家族がついついリビングルームに集まることが多くなった。それは明らかに大変化だったという。 そこから「デジタル製品は家族に絆を復活させる」ことを発見し,「Living in High Definition」のキャンペーンが発想されたのである。

 デジタルは暖かいもの,ヒューマンなものだという気付きは,ほんとうに素晴らしい。