北京五輪に向け、待たれる解禁

 上で紹介したいずれのメーカーも、「解禁されればいち早く製品化するが、放送業界からゴーサインを得られない限りは絶対に手を出さない」というポリシーを明確に示している。そして、ARIBやビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS社)、デジタル放送推進協会(Dpa)といった放送業界の関連団体と密接に話し合いながら、放送業界の理解を得られる仕様作りに腐心していることがうかがえる。

 放送業界からも、こうしたメーカー各社の取り組みを前向きに評価する声が聞こえ始めている。「違法チューナーを叩くという対策ではなく、まじめな製品をユーザーに提供すべきとの考え方は、放送業界の中でもきちんと認識している。時期は言えないが、前向きに考えている(放送業界関係者)。

 こうした状況を総合すれば、パソコンの外付けチューナーの単体販売を一律に規制する時期はそろそろ終わりではないだろうか。ユーザーの求める市場に対し、適切で低廉な製品を投入でき、健全な市場が築けるならば、チューナー内蔵型の地デジテレパソや他のAV機器と同様、B-CAS社などの審査を経て販売を許可する方針に転換しても良いだろう。

 もちろん、解禁当初はチューナー内蔵型の地デジテレパソや、低価格のテレビ受像機などの市場に影響が出る可能性もある。だが、地デジ市場全体が活性化することによる需要喚起という相乗効果が期待できる。チューナーモジュールや暗号化LSI、映像処理LSIなど部品単価の値下がりも期待できる。

 チューナー内蔵型の地デジテレパソが、技術で差異化する道もある。例えば、東芝は米IBMやソニーらと共同開発した「Cell」をベースに、高度な映像処理性能を持つLSI「SpursEngine」を開発。同社製の地デジテレパソ「Qosmio」に搭載する意向を表明している。中長期的には、外付け型は簡単にテレビ機能を追加できる製品、内蔵型は高画質や豊富な映像処理機能を特徴にしたフラッグシップ製品と、それぞれの特徴を生かす形で共存共栄が図れるだろう。

 そして、2008年8月8日には北京五輪が開幕する。かつて薄型テレビやDVDレコーダーがそうであったように、新たな市場を創出するのに大規模なスポーツイベントは大きなキッカケになる。ここに間に合うように、外付けチューナーの単体販売が始まるのが理想的な姿だろう。逆算すると、おおむね春ころまでに放送業界としてのゴーサインを出すことが望まれる。

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■訂正がありました
5ページの第3段落において、初出時に「同社は既に、PCIカード型製品をパソコンメーカーにOEM供給している」としておりましたが、miniPCIカード型製品の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。