3波対応やダブルチューナーで差異化

 映像機器専業メーカーのピクセラも、外付けチューナーの単体販売に向けた準備を進めている。同社は2005年4月、地デジ映像をハイビジョンで視聴・録画できるパソコン向けチューナーカードを初めて製品化。シャープ、ソニー、日立製作所、富士通など、大手メーカー向けOEM供給で圧倒的なシェアを誇る。2006年4月のワンセグ本放送開始時にも、いち早く対応製品の量産出荷を始めるなど、技術力で信頼を築いてきたメーカーである。

 同社は具体的な製品概要を明らかにしていないが、まずはデスクトップパソコン用にOEM供給しているPCIカード型製品を単体販売する意向とみられる。「ハード、ソフトともにOEM供給用として既にあるので、あとは量産やマーケティングなど開発以外の作業をすれば出荷できる。外付けの単体販売が正式に認められれば、直ちに当社としての対応を発表する。量産出荷はB-CAS社での審査の状況にもよるが、そこから1~2カ月を目指していく」(ピクセラ 経営企画室の榎信明氏)。

 同社では、機能の豊富さによる他社製品との差異化を考えている。「当社ではこれまでに、地上/BS/CSの3波対応、アナログ/デジタル両対応、チューナー2個搭載など多様な機能を持つ製品を提供してきた。外付けチューナーの単体販売でも、ユーザーの多様な用途に応じられるよう、製品を提供していきたい」(ピクセラ TVキャプチャープロジェクトの橋谷智孝氏)。その代わり、価格はバッファローより高めの水準になりそうだ。コンテンツ保護は、バッファローと同様に専用LSIを用いる。ダビング10にも対応していく方針だ。

USB接続の製品も早期に投入

 バッファロー、ピクセラのいずれも、USB接続の外付けチューナーを近いうちにラインアップに加える意向を示している。「PCIカード型でもある程度の引き合いはあるだろうが、現在市販されているパソコンの大半はノート型。ExpressCardをまだ搭載していない製品も多いことを考えれば、USB接続の製品はどう考えても必要だろう」(バッファローの中村氏)。「USBという選択肢は確実に必要。汎用インタフェースという点ではUSBもPCIも同じであり、PCIカード型と同様に暗号化できていれば、インタフェースの違いは問題にならないと考えている」(ピクセラ 経営企画室の紺木大幹氏)。

 映像機器専業メーカーのエスケイネットは上述の2社と異なり、単体販売が解禁されたらまずUSB接続型を投入する考えだ。現在デル向けにOEM供給している、USB接続のMonsterTV HDUを単体発売することを検討している(図10)。

図10 エスケイネットが開発した、USB接続の外付けチューナー。手のひらに載る程度のきょう体サイズである
図10 エスケイネットが開発した、USB接続の外付けチューナー。手のひらに載る程度のきょう体サイズである (画像のクリックで拡大)

 MonsterTV HDUの特徴は、ズバリ価格競争力だ。MULTI2の復号やローカル暗号化、パソコン内部の監視などをソフトウエアで担う。高性能なCPUが必要となるが、専用LSIを省くことで大幅な低価格化を図れる。現状、デル製パソコンにMonsterTV HDUをオプションで追加する場合の差額は1万9800円。USB接続の外付けチューナーは出荷台数が多くなることが見込まれ、量産効果を発揮しやすいため、ワンセグチューナーのように急激に低価格化が進むだろう。「MonsterTV HDUは、店頭価格が2万円を下回っても十分採算が取れる」(妹尾社長)と、先を見越した戦略に胸を張る。復号などをソフトウエアで処理する方式は、「ソニーの地デジテレパソなどで採用された実例があり問題ないと考えている」(妹尾社長)。

 同社ではさらに、地デジチューナーを2個搭載しつつ、きょう体を現行製品とほぼ同サイズとした製品の開発を進めているようだ。また、「MPEG-2 TSからH.264への映像変換LSIで当社の用途に見合うものを探しているところ」(妹尾社長)といい、H.264方式の採用による長時間録画機能を実装する意向を示している。