図1 DDR2 DRAMの読み出しシーケンス<br>DDR2 DRAMでは,データ・ストローブ信号がクロックの倍の速度で動き,この立ち上がり/降下に同期してデータが出てくる。
図1 DDR2 DRAMの読み出しシーケンス<br>DDR2 DRAMでは,データ・ストローブ信号がクロックの倍の速度で動き,この立ち上がり/降下に同期してデータが出てくる。
[画像のクリックで拡大表示]
図2 DDR2 DRAMのデータ入出力の手順&lt;br&gt;DDR2 DRAMの内部構造はDDR DRAMの延長線上にある。1回のアクセスで同時に4セルにアクセスして,これを4倍速で出力するという仕組みを採る。
図2 DDR2 DRAMのデータ入出力の手順<br>DDR2 DRAMの内部構造はDDR DRAMの延長線上にある。1回のアクセスで同時に4セルにアクセスして,これを4倍速で出力するという仕組みを採る。
[画像のクリックで拡大表示]

 DDR SDRAMに代わってパソコン向けメモリの主役の座にあるのが,DDR2 SDRAMである。DDR SDRAMの後継として開発された規格を使う。端的に言えば,DDR SDRAMをさらに倍の速度にした,と考えればよい(図1,2)。電源電圧は1.8Vまで引き下げられており,同一データ転送速度であればDDR SDRAMより30~40%程度消費電力を下げられる。動作周波数は400MHz,533MHz,667MHz,800MHzの4種類のみ。バス幅はDDR SDRAMと同様に4ビット,8ビット,16ビットが標準で,32ビットを提供するベンダーも少数であるが存在する。メモリ容量は128Mビット(16Mバイト),256Mビット(32Mバイト),512Mビット(64Mバイト)に加え,1Gビット(128Mバイト)や2Gビット(256Mバイト)品までが標準で提供されるようになっている。CL値はさすがに大きく,400MHz品でCL=3,533MHz品でCL=4,667MHz品でCL=5,800MHz品でCL=6が標準的な値である。

 DDR2 SDRAMは,2006年からパソコン向けメモリとして標準になっており,メモリ・ベンダー各社が現在もっとも力を入れている製品である。パソコン向けCPUとしては,Intel社と米Advanced Micro Devices,Inc.(AMD社),台湾VIA Technologies,Inc.の3社と,それに加えて米Transmeta Corp.が生産している。パソコン向けCPU市場の9割以上を占めるIntel社とAMD社が2008年末あたりまではDDR2 SDRAMを中心に据える方針を出している(下掲の「DDR3 SDRAM対応のプロセサ登場は2007年6月,Intel社の完全移行は2008年後半~2009年以降」)。当然,メモリ・ベンダーはこの状況を踏まえて生産しているので,DDR2 SDRAMは非常に入手しやすく,かつ価格も安い。

組み込みでDDR2は,2008年以降

 パソコン向けでは広く浸透したものの,組み込みプロセサ向けではDDR2 SDRAMが普及しているとは言いがたい。組み込み向けでは,「PowerPC」や「MIPS64」といった高性能64ビット・マイコン向け,一部のマルチメディア専用プロセサ向け,パソコン・アーキテクチャを利用した組み込みシステム向け,などDDR2 SDRAMの用途は限られている。その理由は,大きく三つある。

(1)低コスト向け,あるいは低消費電力向けのシステムでは採用しにくい。信号伝達速度が非常に高速なため,これをフルに使うためにはCPUコアのみならず内部バスなども十分に高速化しないと意味がない。

(2)信号伝達速度が高速なため,波形の乱れに対して敏感である。シンクロナスDRAMやDDR SDRAMを使うシステムよりも,基板上の信号伝達特性に留意する必要があり,そのまま設計コストに跳ね返ってくる。

(3)コントローラがかなり複雑であり,標準でインタフェースが提供されるところまで普及していない。動作速度は130nm以下の製造プロセスを使わないと間に合わない(90nmプロセスが主なターゲット)。プロセスの製造コストはまだ高い。

 これらの要因から,組み込みプロセサでのDDR2 SDRAM採用は限定的である。メモリの価格が下がっても,システム全体の価格はまだ高い。従って,おそらく2007年~2008年前半までは,HDサイズの動画を扱う映像系や,1Gビット/秒以上を要するネットワーク系といった,ごく限られた用途にのみDDR2 SDRAMが使われる構図が続くだろう。ただし,徐々に組み込みプロセサの性能向上への要求が高まりつつある現状では,2008年後半あたりからはDDR SDRAMで不足をきたし,DDR2 SDRAMに移行するというケースが出てくると思われる。