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【等身大のチャイニーズワーカーを知る】第12回---ケータイ“依存症”

海外進出コンサルタント 遠藤健治
2007/12/10 13:32
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 少ない給料をなんとかやり繰りして生活していく中国工場の作業員たち。貧富の差が激しい中国では,前回紹介したように,故郷の家族に仕送りしなければならない人がたくさんいます。しかしその一方で,経済発展の恩恵を受けて家族への仕送りをする必要のない作業員も少しずつ増えています。こうした作業員は手にした給料をすべて自分のために使えるのですが,別の問題を抱えるケースが少なくありません。中でも目立つのは,携帯電話にのめり込む作業員の増加です。

 先日,私は中国に出張し,かつて勤務していた日本メーカーの中国工場で管理者として働く中国人と話す機会を得ました。そのとき,彼から最近の作業員に対してこんな愚痴を聞かされたのです。

「近ごろ,生産ラインで治具や設備の誤作動がたびたび発生して困っているんですよ」
「生産ラインの設備不良ですかね? 保全担当者が手を抜いているとか…」
「いいえ,違うんです。あまりにも頻繁に誤作動が起きるので,よく調べてみると,原因は携帯電話でした」
「ケータイ,ですか?」
「そうなんです。作業員の携帯電話機が原因だと分かったのです。彼らは休憩時間はもちろん,勤務時間中にトイレなどに隠れてメールを打っています。ひどい場合は,仕事中にトイレに行ったきり,10分近くも戻ってこない作業員がいることも分かりました」

 中国では携帯電話の普及が驚くほど進んでいます。普及率の向上につれて携帯電話機の価格も下がっていき,当初は日本円に換算して数万円ほどしていたものが,今では1万円を切る手頃な機種がたくさん販売されています。電話代も安くなり,携帯電話機は中国工場で働く作業員でも十分手が届くものになりました。

 この急速な普及により,生産現場に携帯電話機を持ち込む作業員が増えたのです。もちろん,会社は勤務時間内に携帯電話機を使用することを禁じています。しかし,生産現場に持ち込むことまでは完全に禁止することはできませんでした。携帯電話機の盗難が多いからです。

 実は,中国には携帯電話機の中古市場が存在します。そのため,使い古しの携帯電話機を高値で引き取る業者がたくさんあります。「手机回収」と表示された看板を掲げた店がこうした業者です。日本の,いわゆる3Gケータイと同様に,中国の携帯電話機はSIMと呼ぶICカードを本体に差し込むことで通話や通信ができる仕組みになっています。つまり,SIMカードさえ交換すれば,どのメーカーの機種だろうと関係なく使えるということです。この仕組みを悪用し,他人が所有している携帯電話機を盗んで業者に売りさばく人間が中国には跋扈(ばっこ)しているという現実があるのです。

 この盗難を避けるために,作業員は自分の携帯電話機を常に身の回りに置こうとします。社内での盗難事件の発生という厄介な問題を抱えたくない会社は,こうした事情を勘案してやむなく携帯電話機の生産現場への持ち込みを黙認したというわけです。ただし,作業員に携帯電話機の電源を切ることを命じました。

 ところが,中には携帯電話機の電源を入れたままにしている作業員がいます。たまたま忘れていたという場合もあるでしょうが,故意の場合も少なくありません。通話は無理でも,作業を抜け出して人目を盗んで友人などとメールをやり取りする作業員はたくさんいます。その電波の影響で工場の検査設備が異常値を示したり,オシロスコープの波形が乱れたりといった事故が後を絶たないというのです。

 もちろん,仕事中の携帯メールのやり取りがいけないことは作業員も分かっています。しかし,自分の携帯電話機が原因で,生産現場で事故やトラブルが発生し得ることを理解している作業員はほとんどいません。中国工場で働く日本人の管理者は,作業員の一人ひとりにこのことを説明して理解させる必要があります。また,作業前に「携帯電話機の電源を切りましたか」と全員に注意すれば,こうしたリスクを回避できるでしょう。

「ケータイ貧乏」という現実

 作業員の携帯電話への依存度の高さは,個人の生活にも影響を及ぼし始めています。日本のある中小メーカーが上海近郊に設けた工場では,こんなことがありました。(次のページへ

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