第3部<標準仕様の読み方>
相互接続できなければBluetoothとは呼べない

著者:吉田一三 日本綜合開発(JTD) 取締役部長 NB室長

Bluetooth対応機器を設計するうえでの留意点を,日本綜合開発(JTD)の吉田一三氏が寄稿した。1999年10月に開催した本誌セミナ「次世代無線インタフェース Bluetoothをどう使う,どう作る」から。

 Bluetoothインタフェースを機器に搭載する上で,一にも二にも重要なのは相互接続性の確保である。Bluetooth対応機器は,きちんと「つながり」,かつ,きちんと「使える」ものでなければならない。  ここで,きちんと「つながる」というのは,物理レイヤの相互接続性を指す。たとえば,IrDA(Infrared Data Association)やIEEE802.11でも,対応機器間の物理レイヤの相互接続性は確保されている。問題なのは,きちんと「使えるか」どうかだ。IrDAでは,ここに問題があった。Windows95にドライバ・ソフトウエアが搭載されるという追い風のおかげで,数百万台のパソコンや携帯型情報端末に,IrDAインタフェースは搭載された。しかし,実際にファイル転送などのソフトウエアを動作させると,つながらないことが多かった。

  Bluetoothではこうした問題の発生を未然に防ぐ目的で,当初から相互接続性の確保に力を入れている。そのための仕組みは,仕様書にしっかりと記述されている。

 Bluetoothでは,きちんと使えるようにするため,「プロファイル(Profile)」として規定している。プロファイルは,応用機器別のソフトウエア・スタックの実装手法を明記したものである。コードレス電話やヘッドセット(マイクロホン付きヘッドホン)などの応用機器別に12種類定めている。機器メーカは,このプロファイルに沿って,ソフトウエア・スタックを実装すれば,他社の機器との相互接続できる。  たとえば,海外に出張して,非常にデザインのいいBluetoothコードレス電話機を買ってきたとする。家では家で,Bluetoothをつかったコードレス電話システムがある。当然,それらをつなげたくなる。Bluetooth対応機器であれば,物理的に接続できることは間違いない。しかし音量調節がうまく動作しない,などの不具合が生じる可能性がある。

 プロファイルではこうした問題を避けるため,最低限必要な機能を,ユーザ・インタフェースまで含めて規定してしまおうというものである。 プロファイルは,ベースバンド処理のレイヤから,アプリケーション・レイヤの上位のユーザ・インタフェースに関してまで,事細かに規定している。仕様書第1版(Bluetooth Version1.0)のコア仕様の総ページ数は1500ページほどだが,プロファイルもそれに匹敵する量があると思って開発した方が良い。


電話関連プロファイルの利用例
電話に関するプロファイルには,コードレス電話プロファイルとインターコム・プロファイルの二つがある。前者は,コードレス電話などに,後者は構内電話などに使う。図はコードレス電話プロファイルの利用状況の例。Bluetoothを使って,宅内電話機と専用コードレス電話機や携帯電話機で音声データをやりとりする。