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【等身大のチャイニーズワーカーを知る】第11回---手取り6000円の給料の使い道

海外進出コンサルタント 遠藤健治氏
2007/12/05 12:04
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 中国のシンセンにある工場で働く作業員の平均的な給料(月給)の額は,残業代込みで1000元くらい,日本円で1万5000円ほど。ここから各種保険や宿舎費,会社が用意する食費などが200元ほど天引きされ,手取りはざっと800元(1万2000円)となってしまいます。シンセンはまだよい方で,額面が800元ほどで手取りがわずか400元(6000円)という地域もあるようです。

 日本にある企業からすると少ない金額ですが,物価の安い中国ではこれで食料品や衣料品など多くの製品を購入できます。作業員にとって給料日は特別な日。みんな朝からうれしそうな表情を見せています。手にした給料は,できれば自分のために使いたいとみんな思っています。しかし,なかなかそうはできない現実が目の前に横たわっています。

 現在は給料の支払いを銀行振り込みにしている会社が多いのですが,まだまだ現金支給のところも残っているようです。例えば,私がかつて働いていたある日本メーカーの中国工場もそうです。シンセンにあるこの工場に勤務する新入社員を中心に,給料日の1日を追ってみましょう。

 入社試験を無事に突破し,作業員として工場で働くことになった白さん(仮名)。入社から約1カ月の間,毎日まじめに勤務してきた彼女にいよいよ給料日がやってきました。

「おはよう,白さん!」
「おはようございます」
「なんか今日は元気だね。何かいいことでもあったの?」
「だって今日は私の初めての給料日なんです。とてもうれしくって!」
「ああ,そうか。もう白さんも入社して1カ月になるんだね。その給料で何か買うの?」
「はい。まず洋服を買いたいと思っています」
「洋服? そういえば白さんはいつも作業服を着ているね」
「たまにはオシャレしないと」

 その日の午後,いよいよ給料の配布です。全作業員が1500人を超え,小ロットから大ロットまでさまざまな製品を生産しているこの会社では,作業員の配属が頻繁に変わります。そのため,どの作業員がどこの仕事場で働いているかを確認する作業はとても大変です。まず,それぞれの製造課の作業員名簿をとりまとめた各事務員が経理部門に集まり,作業員名簿をチェックしながら作業員一人ひとりの給与袋を受け取って製造課に運んでいきます。

 こうして,事務員が製造課に戻ってくると,今度は班長が自分が担当する生産ラインに配属された作業員の給料袋を抜き出します。そして,班長から給料袋が作業員一人ひとりに手渡されるのです。いよいよ白さんが初めての給料を受け取る瞬間がやってきました。

「次は白さん。頑張って働いてくれましたね。ご苦労様。これからもよろしくお願いします」
「はい,ありがとうございます」

 白さんはうれしくてたまりません。先輩の作業員の孟さん(仮名)からすぐに作業に戻るように言われていたことをすっかり忘れ,その場で給料袋を開けて中身を確認し始めました。給料袋の中には4枚の100元札と数元のお札が入っていました。新入社員が手にする初めての給料は400元前後。給料の締め日の関係から残業代が翌月に支払われるこのメーカーのシステムでは,初めの給料では基本給のみが支給されるからです。それでも,この4枚の100元札は彼女にとって一生の思い出となるものでした。

「何をしているの,白さん! 作業だまりがこんなにたくさんできているじゃないの!」
 孟さんが大きな声で白さんに注意します。実は,給料日は作業員にとってうれしい日である半面,管理者から見ると,作業員が浮ついた気持ちになって不良品を出しやすい「要注意日」でもあるのです。これまで部長や班長などからしつこいほどそのことを注意されてきた孟さんは,今は先輩として後輩の作業員を指導しなければなりません。孟さんの声で我に返った白さんは「すみません!」と答えながら給料袋を胸のポケットに押し込むと,生産ラインに駆け足で戻ってたまった製品にねじを締結する作業を再開しました。

 その日の昼休み,白さんは洗濯することも昼寝することもやめて,孟さんと一緒に工場の近くの街に繰り出すことにしました。

「何を買おうか?」
「私は服を買うの。流行時装商場でとても可愛い服を見つけたから,そこへ行きたいな」
「私は靴かな」

工場街に人だかりができるワケ

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