波力発電装置の実用化を目指す日本のベンチャ企業HYPER DRIVEは,先ごろ実施した実証実験の結果を明らかにした。同社は,人工筋肉(EPAM:electroactive polymer artificial muscle)を使った波力発電装置の開発を進めており,2007年8月に研究委託先の米SRI Internationalと共同で海上での実験を実施していた(Tech-On!関連記事)

 実証実験の目的は,十分な発電量が得られるか,波の周期はどの程度か,などを確かめるためだった。このために,出力のデータを0.2秒ごとに測定するとともに,ブイの上下や左右の動きを測定した。

 実験の結果を解析すると,「8月のフロリダ沖は波が穏やかなために,思ったようなデータが得られなかった」(HYPER DRIVE)。具体的には,10cm程度の高さの波で最大1.2W,平均で0.25Wの出力を得た。バイアス電圧をさらに高めれば,それぞれ11W,2.2Wに高めることができるという。

 狙っていた高さ1m程度の波での発電は実現できなかったものの,波力発電関係者からは穏やかな波で発電できることに驚きの反応が返ってきたという。従来の波力でタービン・ブレードを回す手法では,高さ10~50cmの波でも発電が難しい。図らずも,人工筋肉の実力を示すことになった。

 今後は,さらに高い波で実験するために,実験場所を英国に移す予定である。英国は波が高いうえに,波力発電装置の開発が盛んで,助成金も豊富という。HYPER DRIVEでは,将来は現地に拠点を設立することも視野に入れている。その際は,日本を研究開発,英国を製品化の拠点として活用する。

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