図1 まずは表示部の分解から開始
図1 まずは表示部の分解から開始
[画像のクリックで拡大表示]
図2 表示部とチューナー部は2本のFPCで接続
図2 表示部とチューナー部は2本のFPCで接続
[画像のクリックで拡大表示]
図3 表示部を裏側から見たこところ。有機ELパネルのガラス基板と駆動回路を接続するFPCはすべて形状が異なる
図3 表示部を裏側から見たこところ。有機ELパネルのガラス基板と駆動回路を接続するFPCはすべて形状が異なる
[画像のクリックで拡大表示]
図4 FPCには番号が表示されている(写真は5と6)。実装工程での間違いを防止するためのものだろう
図4 FPCには番号が表示されている(写真は5と6)。実装工程での間違いを防止するためのものだろう
[画像のクリックで拡大表示]
図5. 有機ELパネルの裏側には,シリアルが張り付けてある。「September 2007」の記載があった
図5. 有機ELパネルの裏側には,シリアルが張り付けてある。「September 2007」の記載があった
[画像のクリックで拡大表示]

 ソニーの有機ELテレビ「XEL-1」の特徴は,何といっても表示部の厚さが最薄3mmであることだ(Tech-On!の関連記事)。最薄部の厚さ3mmを実現するための工夫はどこにあるのか。日経エレクトロニクス分解班は,まずは表示部の分解に取りかかった(図1)。

 表示部の裏側のベゼルなどを取り外すと,表示部と台座に当たるチューナー部は2本のFPCで接続していることが確認できた(図2)。2本のFPCは電源と駆動信号を伝送するためであると考えられる。

 今回の有機ELテレビは1本のアームのみで表示部を支えているため,ネジはかなりきつく締められていた。何とか表示部を分離して,表示部を裏側から眺めてみる。有機ELパネルの駆動回路などを表示部の下側に集めることにより厚さ3mmを実現しているようだ(図3,図4,図5)。最薄部を構成する部品は有機ELパネルとベゼル,FPCのみだ。

 有機ELパネルのガラス基板の厚さが1枚0.7mmで,計1.4mm。ベゼルの厚さが1枚0.6mmで計1.2mm。これを合わせると2.6mm。FPCのたわみなどを考慮して0.4mmの空間を設けているようだ。

 現行のノート・パソコンなどで用いられる液晶パネルのガラス基板の厚さは1枚が0.2mm程度のものが存在する。世界初の有機ELテレビということもあり,極端にガラス基板を薄型化することなく,強度を優先しているとみられる。

「3mmは最初に決めた」と開発責任者

 開発を指揮したソニー テレビ事業本部 E事業開発部 統括部長の白石由人氏は,「厚さ3mmという数字は最初から決めていた」と語る。

 ガラスやベゼルなど,必要最小限の要素の厚さを考慮すると,最も薄くできるきりのいい数字が3mmだったという。そこで,3mmという厚さをターゲットにした上で,設計を進めた。3mmよりさらに薄くしようとすると,「ガラスやベゼルを削っていくしかない」(白石氏)。

 今回の有機ELテレビのデザイン設計は,デザイナーが担当した。白石氏は言う。「極めて薄いガラスが自ら光って映像を映し出している事実に,私自身が驚いた。このテレビのデザイン設計はエンジニアに任せてはいけないと考え,デザイナーに見せた。デザイナーも驚き,すぐに30枚ほどのスケッチを描き起こした」。その結果生まれたのが,この独特な形状というわけだ。

 日経エレクトロニクスは2007年12月17日号に,分解などにより有機ELテレビを詳細に分析した特集記事を掲載する予定です。

動画 有機ELテレビ分解 Part1(約4分19秒の動画)
ビデオ再生にはWindows Media Playerが必要です。
再生ボタンをクリックするとビデオが始まります。

Powered by BPtv

この記事を英語で読む

この記事を中国語で読む