神戸製鋼所は,同社の次世代製鉄法「ITmk3」による粒鉄製造プラントを米Steel Dynamics社(SDI社)と共同で建設,2009年中旬に操業を開始する。このプラントで造るのは,鉄純度が96~97%,粒径が5~25mmの「アイアンナゲット」と呼ばれるもの。従来型のプロセスと比べて二酸化炭素排出量や設備投資額を低く抑えられるという。

 ITmk3は,Ironmaking Technology Mark3を縮めたもの。同プロセスでは,鉄鉱石と石炭をミキサで粉砕,造粒機によって「パチンコ玉大」(同社)にしたペレットをドーナツ状の「回転炉床炉」に投入する。このペレットは,酸化鉄やスラグ成分から成る鉄鉱石と,主に炭素を主成分とする「還元剤」が結合したものである。これを前出の炉内で加熱すると,鉄鉱石中の鉄が還元され,鉄およびスラグ成分が結合した還元鉄と二酸化炭素とに分離する。炉から還元鉄を排出し,振動および磁石でスクリーニングを行うと,還元鉄からスラグが分離した純度の高い鉄(アイアンナゲット)が得られる。

 得られたアイアンナゲットは,電炉で鉄鋼を造る際の原料として利用する。一般に電炉では,鉄スクラップが原料として使われるが,アイアンナゲットと併用することによって鉄鋼の品質を高められるという。

 ITmk3を適用した粒鉄製造プラントは,処理規模は小さい(50万t/年,高炉は一般に数百万t/年)ものの,初期投資額は少なくて済む。また高炉から得られるのは銑鉄であり,高炉以外に転炉や連続鋳造装置,圧延装置などを組み合わせた一貫製造プロセスで利用されるのに対し,ITmk3から得られるのは運搬が容易な冷鉄源であるため,市場としても住み分けると,神戸製鋼では見ている。