ソニーは,ホログラフィック記録を利用した多層記録技術「Micro-Reflector方式」を用いて7層相当で記録再生した。再生信号にイコライジングなどの信号処理を加えた信号のエラー・レートを算出した。今までは4層までの記録再生で,再生信号のアイ・パターンを公表していただけだった(Tech-On!関連記事)。この成果は,2007年10月21~25日にシンガポールで開催された光メモリの国際会議「ISOM’07」などで発表したものである(講演番号Mo-D-01)。このほかデータ転送速度の高速化,1層当たりの記録密度の向上,記録層のさらなる増加についても講演した。

 Micro-Reflector方式は,ホログラフィック媒体の表と裏の両面から光を当て,それぞれの光の焦点を合わせて記録層で干渉させて,干渉縞を記録する。干渉縞は1ビットの情報量に相当する。再生時は一方から光を当てて情報を再生する。ホログラフィック媒体に干渉縞を記録するものの,同社はホログラフィック記録技術ではなく,多層記録技術と位置づけている。焦点を合わせる深度を変えると,あたかも多層媒体に記録するように,複数の深さに干渉縞を記録できるためである。記録層が1層で済むため,記録層を複数設ける一般的な多層記録方式に比べて記録媒体の構造を単純にできることが利点という。

エラー・レートは実用水準

 今回発表したエラー・レートは各層によって異なる。最大4.1×10-4で,「誤り訂正を施せば問題なく信号を再生できる」(ソニー)という。利用した信号処理の手法は「DVDと非常に近いもの」(同社)である。記録符号化には「1-7PP」を用いる。1層あたりの記録密度は,直径12cmのディスクに換算すると1.2Gバイトに相当する値と説明する。実際に利用した記録媒体は直径8cm程度の小型ディスクで,直径方向の幅が約200μmの領域に干渉縞を記録した。

データ転送速度,記録密度,記録層数の向上を図る

 ソニーはデータ転送速度の高速化,1層当たりの記録密度の向上,記録層の増加にも取り組んでいる。記録時のデータ転送速度を向上するため,ディスクの回転速度を1050rpmと従来の15倍に高めてデータを記録した結果も報告した。1.388MHzと従来の15倍の信号周波数で記録し,再生波形を確認したところ正弦波に比較的近いきれいな信号波形を観測できたという。再生時のディスク回転速度は70rpmである。今回は記録符号化をしていない。観測した再生信号を,「1-7PP」で記録符号化した場合の最短記録マークの再生信号とみなすと,記録時のデータ転送速度は3Mビット/秒に相当するという。

 記録密度の向上に関しては,1層あたりの記録密度を,直径12cmディスク換算で3Gバイト相当にまで高めた結果を示した。従来の2.5倍である。信号処理後の再生信号を観測したところ,良好なアイ・パターンを確認したという。エラー・レートは算出していない。記録密度を高めるため,1-7PPで記録する際のチャネル・クロック周波数を920kHzと従来の2.5倍に高めた。

 ソニーは記録層を10層まで増やして記録再生した結果も公表した。記録符号化には1-7PPを用いた。エラー・レートは算出しておらず,再生信号のアイ・パターンの観測にとどめている。いずれの層でも良好なアイ・パターンを確認したという。なお,1層あたりの記録密度は直径12cmディスク換算で1.2Gバイト相当である。

 ソニーの目標は,直径12cmディスク換算で1枚500Gバイトの記録容量を2010年ごろに実現すること。1層あたり25Gバイトで20層に記録することを目指す。

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