図1 富士重工業が開発した「次世代ADA」。車両のルーム・ミラー付近にステレオ・カメラを搭載している。
図1 富士重工業が開発した「次世代ADA」。車両のルーム・ミラー付近にステレオ・カメラを搭載している。
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図2 日立製作所が製作した「次世代ADA」のステレオ・カメラ。日立製作所のブースにて展示してある。
図2 日立製作所が製作した「次世代ADA」のステレオ・カメラ。日立製作所のブースにて展示してある。
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 富士重工業は,二つのCCDカメラによる映像のみで,プリクラッシュ・セーフティなどを実現する「次世代ADA(Active Driving Assist)」を第40回東京モーターショー(一般公開日:2007年10月27日~11月11日)で披露している(Tech-On!関連記事12)(図1)。

価格は約半分に

 ステレオ・カメラとミリ波レーダで構成していた従来のシステムに比べて販売価格は「約半額になる」(同社の説明員)という。従来の設定価格は約35万円であった。ミリ波レーダを使わないことや,画像処理を専用ASICと市販のマイクロプロセサで行い,カメラ・モジュールに内蔵した。2008年春ごろに「レガシィ」に設定する予定。

ステレオ・カメラは日立製作所製

 カメラはモノクロCCDを使う。画素数は約30万画素でフレーム・レートは30フレーム/秒である。100m先まで認識できる。特に「近距離での測定にこだわった」(説明員)と言い,車両前方2m先では数cmの誤差で,前方障害物との距離を判別できる。遠距離では誤差は数mと大きくなるが「遠距離の情報を使っての車両制御はアクセルのオン/オフ制御くらいで,高い精度で距離を認識する必要性は低い」(説明員)とする。ステレオ・カメラの製造を担当したのは日立製作所で,同社のブースにてステレオ・カメラを展示している(図2)。映像処理用のマイクロプロセサとしてルネサス テクノロジの「SH-4」シリーズを搭載してあるという。

映像の3次元化処理はハードウエアが担当

 同社の映像処理は,二つのカメラ映像をカメラ・モジュールに内蔵したASICでハードウエア処理することが特徴である。「3次元化処理は,演算の負荷は大きいけれども,アルゴリズムとしては単純。並列回路を使って,ベルトコンベアの流れ作業のように一挙に処理する」(説明員)という。3次元化した映像から,前方車両の距離や障害物,白線,車両のふらつきなどを認識する演算を行う際には同社独自の画像処理用ソフトウエアを使ってマイクロプロセサ上で処理する。ふらつきは白線を基準とする映像の揺れの周波数を主に考慮することで判定する。このほか,カメラの取り付け位置による映像のズレを走行中に補正するアルゴリズムを搭載している。詳細については「重要なノウハウであり,言えない」(説明員)という。

夜間の霧発生時での使用は検討中

 今回のシステムでは,ミリ波レーダを使わずにステレオ・カメラのみで車両外部の情報をセンシングする。一般にミリ波レーダは,雪や霧などの状況でも,前方の障害物などをカメラに比べて認識しやすいと言われている。従来のADAでもこういった性能を考慮して,ミリ波レーダとステレオ・カメラの組み合わせを採用していた。今回のシステムでは,「夜間の霧や雪などでも,独自のカメラの感度処理や映像処理により,多くの人の想像以上に,カメラだけで前方の障害物を認識できる」(説明員)という。ただし「運転者の目で前方の障害物を認識できない状況のときに,本当に運転支援が必要なのかどうかについては難しい問題」(説明員)と語り,このような状況で次世代ADAを動作することについては消極的だ。

他システムとの連携はCANで

 次世代ADAとブレーキ制御システムなどの他システムとの連携にはCAN通信を使う。ADAで他システムの制御に介入するかどうかの判断を行い,介入する際は,トリガ信号をCANに送信する。「映像信号をCANに送信するわけではないので,それほど大きなデータ量ではない」(説明員)という。ちなみに同社のCANは,ボディ系のCANと走行制御系のCANという二つに分かれているという。

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