図1 Clairvoyante社の技術を適用した有機ELパネル
図1 Clairvoyante社の技術を適用した有機ELパネル
[画像のクリックで拡大表示]
図2 消費電力の低減効果。グラフの縦軸は削減率を示す。PenTileとは同社独自の画素配列を指す。DBLCはdynamic backlight controlの略
図2 消費電力の低減効果。グラフの縦軸は削減率を示す。PenTileとは同社独自の画素配列を指す。DBLCはdynamic backlight controlの略
[画像のクリックで拡大表示]
図3 Clairvoyante社の技術を適用した液晶パネル。左側に消費電力の時間変化を示すグラフが表示されている
図3 Clairvoyante社の技術を適用した液晶パネル。左側に消費電力の時間変化を示すグラフが表示されている
[画像のクリックで拡大表示]

 米Clairvoyante, Inc.は,2007年10月24日よりパシフィコ横浜で開催される「FPD International 2007」で2種類の技術を公開する。一つは,有機ELパネル向けに独自のサブピクセル配列を適用するもの。サブピクセルごとにみた電流密度を低下させることで寿命を「携帯機器用途で十分な水準に延ばせる」(米Clairvoyante社CEOのJoel Pollack氏)という。もう一つは,液晶パネルのバックライトなどを的確に制御して,消費電力を従来比で1/2未満に低減するものである。

赤と青が大きい

 有機EL向け技術は,韓国Samsung SDI Co., Ltd.がワイドVGA品(800×480画素)で採用した(図1)。Clairvoyante社によれば,Samsung SDI社は2008年第3四半期までに量産を始める計画。消費電力は400mW,色域はNTSC比100%,画面サイズは3.08型,輝度は200cd/m2,コントラスト比は1000:1である。

 Clairvoyante社は,これまで液晶パネル向けではW(白色)のサブピクセルを追加することで消費電力比の輝度などを向上させてきたが,今回の有機ELパネルではWを用いない。画素配列はR(赤色)G(緑色)B(青色)で,Gに対してBとRのサブピクセルの面積は2倍ほどに広い。青色と赤色の発光効率が低いためだ。「それでも色を的確に再現できる発光制御法を開発した」(Clairvoyante社のPollack氏)。

 白色を用いない理由は次のように説明する。「他社はRGBカラー・フィルタで白色を実現したが,光の透過効率が良くない。カラー・フィルタなしでWを作ると,今度は発光材料が未成熟という課題がある」(Clairvoyante社 Sr. Director, Technical Business Developmentの西村俊一氏)。ただし,W向けの材料の準備が整えば液晶パネルと同様,RGBWというサブピクセル配列を前提とした発光制御法を提供できるという。

人は相対的に明るさを感じる

 液晶パネル向け技術については,RGBWというサブピクセル配列で「消費電力を半減した上に15%減,つまり65%の低減効果をもたらす」(Clairvoyante社のPollack氏,図2)。これは一般的なテレビ番組を見たときを前提とする。RGBという通常のサブピクセル配列を用いてバックライトを制御するだけでは,消費電力を30%しか減らせないと同社は主張している。

 同社が消費電力を従来比で1/2未満に減らせるのは,人がフレームの中の明るさを相対的に感じるという視覚特性に着目したことによる。具体的には,再生する映像の場面に合わせてバックライトの輝度を制御するだけでなく,白色のサブピクセルを用いて,同じフレームの中の特定領域ごとに輝度を制御した。

 本誌がClairvoyante社の本社で取材したときには,カシオ計算機がこの技術を適用した試作品を見ることができた(図3)。通常の品種と比べて消費電力が減らしながらも,見た目上はコントラスト比などに差があると感じられなかった。「技術自体は既に量産品に適用できる水準。多くのライセンス先を近いうちに公表できるだろう」(Clairvoyante社のPollack氏)。

 Pollack氏は開発した技術について次のように説明して自信のほどを示した。「携帯機器メーカーはユーザー体験を向上したい一方で,増え続ける液晶パネルの消費電力に悩まされている。この根本原因はバックライトの輝度のうちユーザーに届く分が1割以下であること。しかも流行のタッチ・パネルを備えれば,それさえも半減してしまう。我々が開発したRGBWというサブピクセル配列と発光制御技術は,問題解決に不可欠なはずだ」。

この記事を英語で読む

この記事を中国語で読む