富士重工はステレオカメラを使った次世代の運転支援システム「ADA」(Active Driving Assist)を公開した。現在開発中で、2008年に発売する「レガシィ」に搭載する計画。
新開発のステレオカメラと画像処理回路で、歩行者や自転車、自動車などを判定する。衝突の可能性が高くなるとシステムが判断すると、自動的にブレーキを作動させる「プリクラッシュ・セーフティ・システム」が作動する。これまで他社が実用化していたシステムは、レーダもしくはレーダとカメラの両方を用いて実現していた。カメラだけでプリクラッシュセーフティを実現するのは業界でも初めて。障害物の輪郭をパターン認識することで、障害物が歩行者かどうかを判定する。
プリクラッシュセーフティの自動ブレーキの作動タイミングは、新しい技術指針に対応したものにする。衝突が避けられない場合、衝突の1.4秒前から0.51G以上のブレーキを作動させる。従来の技術指針では、0.6秒前に限られていた。「技術的には、自動ブレーキだけで衝突を回避することも可能だが、実用化時は少しはぶつかるようにすることで検討している。衝突を回避できるようにするとドライバーが過信してしまう」(開発担当者)との考えに基づいたものだ。
このほかにも業界で初めて、低速域でのプリクラッシュセーフティも対応した。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどは15km/h以上の高速域でシステムを作動させている。「技術指針では15km/h以下の領域は自動車メーカーの判断にまかされていた。市街地などでの利用を考えるとむしろ低速域での対応が事故軽減に結びつくことが分かったため対応した」(開発担当者)という。
さらに次世代ADAは、シフトレバー操作の誤りによる誤発進の被害を軽減することにも、業界で初めて対応した。ステレオカメラで、前方に壁や障害物があると検知すると、ドライバーが誤ってD(走行)レンジに入れてアクセルペダルを踏んでも、アクセル開度は抑え気味にする。
前方に障害物がある場合は、完全にエンジンの作動を止めるという考え方もあるが「前方に障害物がある場合に、アクセルを完全にキャンセルしてしまうと、ドライバーが前方の距離を縮めたいときや、前方の障害物との距離が短い中でステアリングを回転させるような操作ができなくなる」(開発担当者)と、使い勝手を重視したと説明する。さらドライバーが継続してアクセルペダルを踏むと、衝突前にプリクラッシュセーフティによる自動ブレーキも作動して衝突の被害を軽減する。