図1 Broadcom社 Vice President and Group General Manager, Mobile Multimedia Business UnitのMark Casey氏
図1 Broadcom社 Vice President and Group General Manager, Mobile Multimedia Business UnitのMark Casey氏
[画像のクリックで拡大表示]
図2 携帯電話機向け1チップLSI製品の変遷
図2 携帯電話機向け1チップLSI製品の変遷
[画像のクリックで拡大表示]
図3 「競合でシェア首位の企業の製品を利用したときに占有する4290平方ミリメートルの面積が,BCM21551を利用すれば750平方mm以下に収まる」
図3 「競合でシェア首位の企業の製品を利用したときに占有する4290平方ミリメートルの面積が,BCM21551を利用すれば750平方mm以下に収まる」
[画像のクリックで拡大表示]
図4 BCM2727のブロック図
図4 BCM2727のブロック図
[画像のクリックで拡大表示]
図5 3次元グラフィックス処理を用いた映像や,復号化したHDTV映像をHDMI経由で液晶ディスプレイに出力するデモを見せた
図5 3次元グラフィックス処理を用いた映像や,復号化したHDTV映像をHDMI経由で液晶ディスプレイに出力するデモを見せた
[画像のクリックで拡大表示]

 米Broadcom Corp.は記者説明会を都内で開催し,米国で発表したばかりの携帯電話機向けLSI製品2種の詳細を明らかにした(図1)。一つは,同年10月15日に発表した,アプリケーション処理用のCPUコアや無線通信用のベースバンド処理回路,RFトランシーバ回路などを集積した第3世代携帯電話機向けの1チップLSI「BCM21551」である。もう一つは,同年10月2日に発表した,毎秒30フレームの720p映像をH.264で符号化/復号化する機能などを備えた携帯機器向けのマルチメディア処理LSI「BCM2727」である。

 BCM21551は,同社が「3G phone on a chip」と表現する製品。既発表品である「BCM2153」との主な違いは,W-CDMAの「Release 6」として規格化されたHSUPAに準拠している点。データ伝送速度で下り7.2Mビット/秒,上り5.8Mビット/秒を実現した。さらに,Bluetoothの送受信回路やFM放送の受信回路を備えた点や,アプリケーション処理用のARMコアの動作周波数を533MHzに高めたことなどが相違点である(図2)。65nmルールのCMOSプロセスで製造する。パッケージ面積は14mm×14mmで,端子数は621本。

 Broacdom社はBCM21551を,HSPA(HSDPAおよびHSUPA)などの新しい無線通信方式に対応しつつマルチメディア処理機能が充実した携帯電話機を低コストで実現するための製品として位置付ける。RFトランシーバ回路などを1チップに集積することにより,「シェア首位の競合メーカーの代表的な製品を利用する場合と比べて6倍程度の基板面積の削減が可能になる」(同社 Vice President and Group General Manager, Mobile Multimedia Business UnitのMark Casey氏)とする(図3)。「携帯電話機のほとんどの機能を1チップ化した製品の分野では,他社より1~2年ほど先んじている」(Mark Casey氏)と主張する。

 BCM2727は,同社の「VideoCore」シリーズの第三弾となる製品である。ベクタ演算ユニットや映像の符号化/復号化処理回路,2次元/3次元グラフィックス描画処理回路,JPEGの符号化/復号化処理回路などを備える。これらの論理回路を集積したチップに,32MバイトのSDRAMを積層して,10mm×8mmのパッケージに封止した(図4)。グラフィックス処理回路はOpenGL ES 1.1/2.0とOpenVG 1.0に対応する。HDMIのインタフェース回路を備えており,外部のディスプレイにHDTV映像を出力することも可能である(図5)。

 BCM2727の消費電力は,毎秒30フレームの720p映像をH.264で符号化したときに450mW,復号化したときに160mW,MP3形式の音楽データを復号化したときに10mWである。例えば容量900mAhの電池を使用したときに,720p映像の符号化では約3時間,MP3の再生では約60時間の利用が可能になると見込む。「日本の携帯電話機に最適な製品」(Mark Casey氏)と見ており,国内ではまず携帯電話機メーカーへの販売に力を入れる考えである。