図1 三菱電機のパワー半導体の高効率化ロードマップ。現在は第4世代(4th Gen)に相当する。第3世代(2000年)に比べて約18%,電力損失を低減した。
図1 三菱電機のパワー半導体の高効率化ロードマップ。現在は第4世代(4th Gen)に相当する。第3世代(2000年)に比べて約18%,電力損失を低減した。
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図2 製造時におけるCO2排出量の削減目標。
図2 製造時におけるCO2排出量の削減目標。
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 三菱電機は環境経営における長期ビジョン「環境ビジョン2021」を発表した(ニュース・リリース)。「地球温暖化防止」と「循環型社会の実現」という二つの基本目標を達成するために,CO2排出量削減と製品の3R推進,工場からの廃棄物排出ゼロ(ゼロ・エミッション)への取り組みなどを進める方針を明らかにした。

 CO2排出量削減は「製品使用時」と「製品製造時」「発電時」の3段階での実現を目指す。製品使用時のCO2排出量削減とは,同社製品の消費電力量を低減することを意味する。2021年度までに2000年度に比べてCO2排出量を30%削減する。同社が目をつけるのは中国,アジアを中心とする市場である。「中国では,政府系建物のエレベータの入札で,省エネルギー性が入札条件に加えられるようになってきた。今後,こうした動きが民間にも広がるのではないかと考えている」(三菱電機 環境推進本部 本部長 蛭田道夫氏)。例えば,エレベータであればモータやパワー半導体などの効率を高めることで,消費電力量が減り,結果としてCO2排出量を削減できる。同社ではパワー半導体の高効率化を進めており,IGBTで現在の第4世代に比べて電力損失を約37%削減できるとロードマップを描く。一方で古い世代の素子は価格が下落していくため,中国やアジアで要求されるコストや省エネルギー性に応えられると見込む。

 製品製造時のCO2排出量は工場などの省エネ化を進めることで達成を目指す。京都議定書の基準年である1990年度に比べて2012年までに30%削減を目指す。例えば,三菱電機の工場の生産設備などでは,電力供給のインバータ化が可能と思われる部分のうち現段階ではまだ3~4割しかインバータ化されていないという。2012年までにこうした設備のインバータ化率をほぼ100%までに高め,さらにインバータの高効率化を図ることでCO2排出量の削減を実現する予定だ。一方,中国をはじめとする海外や国内の関係会社では,CO2排出量削減はまだ手付かずといった状態であるという。今後,国内の工場でのCO2削減成果を取り込み,急ピッチで対策を進める予定だ。発電時のCO2排出量削減に向けては,太陽光発電システムの改善を進める。

 2021年まではCO2排出権取引などを利用する予定はないという。同社では,1993年から3年ごとに「環境計画」を発表しているが,長期ビジョンに関する計画を発表するのは今回が初めて。同社の創立100周年である2021年を目標年とした。