「CPFとUPFのフローは絵に描いた餅」,ルネサスが低電力設計フローを公開
ルネサス テクノロジは,同社のSoCの低電力設計フローに関して講演した。このフローは2007年4月から実際のチップ設計に適用を始め,2008年には適用を拡大する予定である。この講演は,日本シノプシスが10月12日に開催したユーザー会「JSUNG 2007」で行なわれた。
今回,登壇したのは,ルネサスの井上善雄氏(製品技術本部設計技術統括部DFM・ディジタルEDA技術開発部主管技師)である。同氏はルネサスの低電力SoCを紹介した後で,大手EDAベンダーが取り組んでいる,低電力化設計データの標準化活動の効果に疑問を呈した。現在,標準化活動は二つある。米Cadence Design Systems, Inc.派のCPFと,米Synopsys, Inc.,米Mentor Graphics Corp.,米Magma Design Automation, Inc.連合派のUPFである。
どちらの派閥も,それぞれの規格に準拠したEDAツールを揃えることで,一貫したLSIの低電力設計フローを構築できると主張している。しかし,井上氏はこの主張に疑問を呈した。「広く一般に使われているツールでフローを構成すれば,CPFとUPFのツールが混在する。この意味では,CPFの一貫フローも,UPFの一貫フローも,絵に描いた餅である」(井上氏)。
さらに,ほぼ同じと言われているCPFとUPFの機能に対しても,「理由は不明だが,肝心なところで,機能の差がある」と同氏は主張する。すなわち,「静的な論理検証はCPFしか対応していない。一方,動的な論理検証はUPFしか対応していない。どちらの検証も必要なわれわれには,CPFもUPFも適合しない」と同氏は続けた。
スーパーセットを選択
ルネサスが選択したのは,CPFでもUPFでもなく,米ArchPro Design Automation, Inc.の独自規格である(Tech-On!関連記事1)。同氏によれば,ArchProの規格がCPFとUPFのスーパーセットになっており,静的検証と動的検証の両方に対応している点を評価したという。なお,ArchProは2007年6月にSynopsysが買収している(同2)。
スーパーセットになっている点に加えて,ArchProを選んだ複数の理由を,井上氏は説明した。例えば,ルネサスの要望に沿って,電源遮断/復帰のシーケンスの定義方法を拡張した。ルネサスが得意な携帯電話機のSoCでは電源領域やモード数が多く,あるSoCでは,同シーケンスの定義には3万6000行の定義が必要だった。従来は,オンになる電源領域を挙げることで,このシーケンスを定義していた。しかし,この方法では,正しく定義できたかをどうかを確認することが困難だという弱点があった。
そこでルネサスはArchProに対して,網羅的に記述して定義抜けが簡単に分かるような方法を提案し,それをArchProが実装した。さらに,ArchProは,同じ意味の記述があると自動圧縮する機能を搭載し,確認作業の手間を軽減した。また同氏は,「ArchProの静的検証ツールがチェックできる項目が多いことも,同社を選択したポイントだった」とした。「静的検証でチェックが済めば,時間のかかる動的検証を減らすことができる」(同氏)。
なお,ルネサスは自動レイアウト・ツールに対しては,独自の形式でツールへの制約条件を入力している。そこで,ArchPro形式とルネサス独自の形式間で,双方向の変換機能を開発し,低電力設計フローに組み込んでいることも井上氏は説明した。
講演の最後に,同氏は,Synopsysへの要望を述べた。ArchProに関しては,ArchProの形式がCPFとUPFのスーパーセットであることを維持していくことや,同社の製品が暗号化された論理モジュールに対応することなどを求めた。またUPFに対しては,CPFがサポートするパーサーやAPIをUPFでも用意することや,EDAベンダー依存の方言を作らないことなどを要求した。












