図1 「2ちゃんねる」の管理人として知られる西村博之氏
図1 「2ちゃんねる」の管理人として知られる西村博之氏 (画像のクリックで拡大)

 ニワンゴは,ユーザーが付与したコメントを映像と重ね合わせて再生できる会員制の動画共有サイト「ニコニコ動画」を2007年10月10日にバージョン・アップした(PDF形式の発表資料)。「YouTubeからのアクセス拒否に対応した『ニコニコ動画(γ)』や,コスト負担を補うための有料会員化を図った『ニコニコ動画(RC)』など,今までは後ろ向きのバージョン・アップだった。今回の『ニコニコ動画(RC2)』は初めての前向きなバージョン・アップ」(ニワンゴ 取締役の西村博之氏)とする(図1)。映像の投稿者専用のコメント機能や,その投稿者専用コメント機能を使って各種のコマンドを入力できるスクリプト機能などを追加した。

図2 動画を配信するパートナー企業を発表
図2 動画を配信するパートナー企業を発表 (画像のクリックで拡大)

 また,映像コンテンツをニコニコ動画で配信することでニワンゴと協力したパートナー企業を新たに7社発表した(図2)。吉本興業,エイベックス・エンタテインメント,エンドレスコミュニケーションズ,ティーエフエム・インタラクティブ,ショックウェーブ エンターテインメント,ランティス,ジェンコの7社である。吉本興業はお笑いのライブやオーディションなどの映像を,エイベックス・エンタテインメントはエイベックス・グループ所属アーティストの映像を配信する計画である。またニワンゴが2007年9月28日に発表していた,Viacom International Japanとの協力によるMTV Networksの映像配信については(PDF形式の発表資料),提供するコンテンツを具体的に検討中であるとした。

 コンテンツの権利者の理解を得ることによって,ニコニコ動画での商用コンテンツの配信を推進する。西村氏は個人的な意見であるとしながら,「著作権法に照らし合わせてどのような姿が正しいのかは,一概に判断できない。その線引きが明確ではないからこそ,ユーザーもコンテンツの権利者も誰も困っていないという状況にすればいい」と述べた。

図3 「どこのサイトもバナー広告として使っているところ」(西村氏)にニコニコニュースの領域を配置
図3 「どこのサイトもバナー広告として使っているところ」(西村氏)にニコニコニュースの領域を配置 (画像のクリックで拡大)

 新版のニコニコ動画(RC2)で追加したのは,以下の機能である。(1)「音楽」「アニメ」「ゲーム」「自然」といった分類ごとのトップ・ページ,(2)動画の投稿者が特定のIDからの書き込みや,特定の単語の書き込みを禁止する「NG設定」機能,(3)動画を閲覧する画面内に設置した,文字のニュースを表示する領域「ニコニコニュース」(図4),(4)アクセス中のすべてのユーザーの視聴を一時停止し,同じ映像を同時に再生させる「ニコニコ割り込み」,(5)視聴者に向けた注意書きなどに利用できる投稿者専用のコメント機能と,その投稿者専用コメント機能を使ったスクリプト機能「ニコスクリプト」,である。ニコスクリプトを利用すれば,映像の一部分だけを表示して周辺を隠す「窓」や,投稿者の出題に対して回答できる「投票」などを実現できる。

1日の平均再生回数は2200万

図4 2007年5月17日に,サービス開始後72日で会員数が100万に達した
図4 2007年5月17日に,サービス開始後72日で会員数が100万に達した (画像のクリックで拡大)

 ニコニコ動画の登録会員数は,2007年10月9日の時点で342万人である(図4)。1日の平均利用状況は,訪問者(ユニーク・ユーザー)が120万人,動画再生回数が2200万回,コメント数が320万であるという。事業としての黒字化はしていないが,「来期中に単月での黒字化を目指す」(ドワンゴ 代表取締役社長の小林宏氏)。

 西村氏は「新聞や雑誌,テレビ,ラジオといった既存のメディアを見ない人たちが自分の周りには多くいる。そうした人たちの生活の場を作るのがニコニコ動画の目標」とする。今後の方針として,ニコニコ動画に投稿された動画を表彰する「国際ニコニコ映画際」を開催するほか,2007年10月18日に台湾向けのサービスを開始することなどを明らかにした。「既存のネット・サービスと同じものは,自分たちがやるつもりはない。ただし,『ニコニコ市場』(Amazon.co.jpのアフィリエイト・プログラムを使った,動画に関連する商品をユーザーが貼り付けられる機能)のように“ネタとして使える”ようなエンターテインメントの要素を盛り込んだ形で提供する可能性はある」(同氏)。