握手する三菱重工社長の佃氏(左)と米P&W社社長のFinger氏
握手する三菱重工社長の佃氏(左)と米P&W社社長のFinger氏
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 三菱重工業は2007年10月9日,開発を進めている国産ジェット旅客機「MRJ」の販売活動を,世界各国の航空会社に対して正式に開始すると発表。同時に同機に搭載するエンジンに米Pratt & Whitney社(以下P&W社)の「GTF(Geared Turbofan)」を採用することを明らかにした。両社経営陣は,会見に顔をそろえMRJ成功に向けて決意を語った。

 MRJは座席数70~90席の小型旅客機で,日本や米国の国内線,欧州の域内線などを狙う。最大の特徴は,燃費が競合機に比べて約2割向上という環境性能と経済性。さらに低騒音や低排ガス,客室の快適性も重視している。開発費は当初,約1200億円としていたが,今回の発表では約1500億円と300億円上積みされた。開発費のうち約1000億円は,三菱重工を中心とし,パートナーを募って2008年春に設立する予定の事業会社が負担する。約500億円は国からの支援が得られる見通し。

 今回の販売活動の開始は,航空機産業でATO(Authorizaition to Offer)と呼ばれる重要なステップ。国産旅客機の実用化に向けての大きな前進になる。三菱重工は2008年3月末までに事業化の可否の最終決定を行う。「価格は30億~40億円を想定している。受注機数だけではなくどこから受注できるかがポイントになる。今後20年程度でMRJクラスの旅客機の需要は約5000機と見ている。このうち2割,約1000機のシェアを取りたい」と三菱重工社長の佃和夫氏は説明した。2008年3月までの販売活動で,どこまでその見通しが得られるかが最終判断のカギを握る。

 一方,低燃費に大きく貢献するGTFエンジンは,精密なギア装置を搭載してエンジンのファンを低圧コンプレッサとタービンから独立した回転数に制御できる。ファン速度を低下させて騒音を抑えられる上,バイパス比を高めるためにファン直径を大きくできるので効率が高まって燃費が向上する。2けたの燃費向上効果があるという。P&W社社長のStephen N.Finger氏は「GTFエンジンを採用したのはMRJが最初。最終的にはすべてのジェットエンジンがGTFなる」と自信を示し,「MRJは先行する分だけ大きなシェアを取れるだろう」と指摘した。