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Si系のイメージ・センサを感度,帯域ともに凌駕
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上から上部電極,光吸収層,下部電極,そしてLSI
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 ロームはCEATEC JAPAN 2007に,広帯域かつ高感度という特性を備える「薄膜積層イメージ・センサ」を参考出品している。産業技術総合研究所(AIST)太陽光発電研究センターとの共同開発品で,(1)LSI上に直接フォトダイオードを作製した,(2)可視光に加えて従来のSi系のイメージ・センサでは十分な感度を得られなかった赤外線領域にも高い感度を備えていることなどが特徴であるという。

CIGS型太陽電池をLSI上に載せた

 出展したイメージ・センサは,CMOS技術を用いた制御回路のLSI配線層の上に直接,フォト・ダイオードから成るセンサの層を形成して作製したもの。チップ寸法の詳細は「まだ未公表」(ローム)だが一辺はおよそ数mm。そこに,1個10μm角の画素を10万個並べてイメージ・センサにした。

 従来のCMOSセンサと大きく異なるのは,フォト・ダイオードが従来のSi系ではなく,CIGS(Cu-In-Ga-Se)型の太陽電池と技術的に同じ構造である点。CIGS型太陽電池は,結晶Siを使わないことから比較的低コストで製造でき,しかも13%前後の高い変換効率を得られることで,世界中で注目を集めている。日本では,ホンダソルテックや昭和シェル石油などが近く本格的な量産を始める(関連記事1関連記事2)。今回,開発に参加したAISTも,CIGS型太陽電池を研究する研究機関の一つである。

 こうした技術を用いたことで,広帯域で高い感度を実現した。可視光領域の量子効率は結晶Siのフォト・ダイオードを用いた場合の約2倍と高く,さらにSi系ではほとんど感度が得られない1.0~1.3μm弱という波長の赤外線領域にも高い感度を備える。CEATEC会場では,赤外線だけを映像パターンに照射しそれをこのイメージ・センサとSi系センサで撮影する実演を披露している。

 主な課題は微細化。今回の試作品では1画素は上述の通り10μm角だが,一般的なCMOSセンサでは,1画素の寸法が2~3μm角という製品が既にある。今回の技術ではまず,CIGSの層を形成してから画素間の溝を削るが,「画素の区画を微細化する技術をもっと向上させる必要がある」(ローム)という。

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