図1 実演の様子。SiC側,Si側ともにモーターの温度は200℃程度になっている。SiCデバイスを利用したインバータ・モジュールは200℃近くにする予定だが,ゆっくり加熱しているため180℃程度になっている。Siデバイスを利用するインバータ・モジュールは200℃まで加熱していない。
図1 実演の様子。SiC側,Si側ともにモーターの温度は200℃程度になっている。SiCデバイスを利用したインバータ・モジュールは200℃近くにする予定だが,ゆっくり加熱しているため180℃程度になっている。Siデバイスを利用するインバータ・モジュールは200℃まで加熱していない。
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図2 左が中空構造型,右が積層構造型のインバータ・モジュール
図2 左が中空構造型,右が積層構造型のインバータ・モジュール
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図3 中空構造のインバータ・モジュール
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図4 積層構造のインバータ・モジュール
図4 積層構造のインバータ・モジュール
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図5 150Aを出力できるインバータ・モジュール。右下に展示品,奥のパネルに駆動結果が載っている。
図5 150Aを出力できるインバータ・モジュール。右下に展示品,奥のパネルに駆動結果が載っている。
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 ロームは,SiCを利用したMOSFETやショットキー・バリア・ダイオードを搭載したインバータ・モジュールを試作した。中空構造と積層構造という2種類のモジュール構造を用いている。デモンストレーションでは,このうち中空構造型のインバータ・モジュールを利用し,SiCを用いた整流用のショットキー・バリア・ダイオードを搭載する3相交流モーターを回転させた(図1)。このモジュールは放熱性を高めるために,中空構造品の中空部に放熱フィンを設ける。

 中空構造と積層構造はいずれも車載用途を意識し,200℃程度の環境下で動作させることを想定している。SiCデバイスを利用すれば高温下でも動作できるため,将来的にはモーターにインバータ・モジュールを直接取り付け,小型化することを視野に入れる。「Siデバイスを利用してモーターにインバータ・モジュールを直接取り付けるのは非常に難しい」(説明員)という。

 実演では,Siデバイスを利用した場合と比較した。200℃の環境で3相交流モーターを駆動させようとすると,モーターが搭載するSi製ダイオードで電流を整流できなくなり,モーターが動作しない。

 展示する中空構造と積層構造のインバータ・モジュールは,いずれも3相交流のモーターを動作させるもの(図2)。耐圧は600Vで,10Aの電流を出力できる。耐熱は200℃。搭載するショットキー・バリア・ダイオードやMOSFETのチップそのものは300℃程度までの耐熱性が見込めるものの,パッケージ材料の劣化によって200℃に律速されている。

 中空構造と積層構造を比較すると,中空構造はより大きな電力を供給することを想定している。大電力を供給することからチップが高温になる可能性があり,そのため中空構造品は積層構造よりも放熱性を高めている。1相分のインバータ回路を3層分と,DC-DCコンバータ回路を合わせた合計四つを立方体の4辺とし,中空構造のモジュールを構成した(図3)。積層構造はインバータ・モジュールの小型化に向けたもの。1相分のインバータ回路を3層分積層している(図4)。

100A以上に対応するSiCインバータ・モジュールも試作

 このほか150Aを出力可能なSiCデバイスを用いるインバータ・モジュールも展示していた。展示パネルには,約25kHzのスイッチング周波数で約150Aを出力した結果が載っている(図5)。インバータ・モジュールはショットキー・バリア・ダイオードとDMOSで1相交流モーターを動かすブリッジ回路を構成している。両素子の大きさはいずれも5mm角である。利用するDMOSのオン抵抗は5~6mΩcm2。さらにオン抵抗を低くすることも可能である。ただし今回は,製造プロセスを安定させて歩留まりを高くすることを考慮して,この値にしたと説明する。