太陽誘電は,電気2重層キャパシタ並みの大電流特性を備えながら,体積当たりのエネルギー密度が数倍高い蓄電デバイスを開発,CEATEC会場で動作を実演した。
正極に活性炭を,負極にハード・カーボンを用いるキャパシタで,あらかじめ負極にLiイオンをドープする,いわゆる「Liイオン・キャパシタ」である。体積当たりのエネルギー密度は15Wh/L。玩具や携帯機器のほか,将来はハイブリッド車での利用も視野に入れる。既に一部のメーカーへのサンプル供給を開始した。
10万サイクル後で90%の容量を保持
開発したLiイオン・キャパシタは,出力電圧が3.8Vと高い。電解液にはLiPF6を使っている。充放電サイクル寿命に関しては,10万サイクル経過後の容量保持率が90%と「一般の電気二重層キャパシタと遜色ない」(太陽誘電)としている。電気二重層キャパシタの弱点とされている自己放電に関しては,「10日間放置した場合に,3.8Vの電圧値が3.7Vに下がる程度であり,自己放電は小さい」(太陽誘電)という。出力密度に関しても,電気2重層キャパシタと同程度としている。
技術のベースとなっているのは,太陽誘電が2007年3月に買収した昭栄エレクトロニクスのキャパシタ技術である。昭栄エレクトロニクスは,ポリアセンを使ったキャパシタ「PASキャパシタ」の技術開発を以前から進めており,2004年にカネボウからポリアセン・キャパシタ事業の営業譲渡を受けたほか,2006年6月には富士重工業からLiイオン・キャパシタのプレドーピングの技術供与を受けていた。太陽誘電はこの昭栄エレクトロニクスを傘下に収めたことで,蓄電デバイス市場への足がかりを築いた。今後は太陽誘電の既存技術と,これらキャパシタ技術を組み合わせた新たな製品開発も手がけていく。
展示会場では, Liイオン・キャパシタで駆動する小型ロボットや,自動車の模型を使った実演を行った。小型ロボットは「RoboCap」と名づけており,公称容量が200FのLiイオン・キャパシタを2個背中に背負っている。約1分間の充電で約5分間駆動でき,パラパラを踊ったり,リモコン制御で歩行レースをしたりなどの実演を見せていた。
なお現在のところ,公称容量が40F,100F,200Fの3種類のシリンダ型キャパシタを揃えている。このうち200Fのタイプは高さ40mmで円筒の直径は25mm,内部抵抗は50mΩである。使用温度範囲は-25℃~+60℃。展示会場ではこのほか,PASキャパシタの出展や,PASキャパシタを搭載して年末に発売予定の玩具を使った実演なども行っている。