有機ELの世界市場の規模推移
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 矢野経済研究所は,有機ELの世界市場の調査結果と今後の予測を発表した(発表資料)。2006年の世界市場の規模は対前年比1.7%増の610億円。2005年までと比べると,成長が大きく減速した。これまで有機EL市場は,携帯電話機や携帯型メディア・プレーヤー向けのパッシブ・マトリクス型小型ディスプレイが牽引してきたが,この需要が一巡したことが減速要因という。加えて,単価の下落幅が大きくなったことも影響した。今後パッシブ・マトリクス型の市場規模を拡大するには,さらなる用途開拓が必要という。アクティブ・マトリクス型ディスプレイの市場は,携帯電話機のメイン・ディスプレイへの採用などによって,立ち上がりが期待できるとする。

 2006年の用途別出荷金額シェアは,前年と比べて大きな変化はない。最も多いのは携帯電話機のサブ・ディスプレイで,全体の52%を占める。次いで多いのは35%の携帯型メディア・プレーヤー。この二つの用途で全体の8割以上を占めている。一方,携帯電話機のメイン・ディスプレイの割合は,4%にとどまる。ただし,2007年にはフィンランドNokia Corp.,韓国LG Electronics Inc.,KDDIの3社が,有機ELディスプレイをメイン・ディスプレイに採用した携帯電話機を発表しており,今後の成長が期待できるとみる。

2006年における用途別出荷金額シェア
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有機ELがコスト競争力を持つには時間が必要

 矢野経済研究所は,有機ELに競合するものとして液晶パネルや照明用の発光ダイオード(LED)などを挙げる。液晶パネルに対しては,性能で優位な点があるものの,生産性によるコストの差が大きく,有機ELのコストが液晶パネルに追い付くには時間がかかると分析する。基板の寸法が液晶パネルより大幅に小さいことや,材料の使用効率が10%以下と低いこと,材料の価格が高いこと,さらに生産の歩留まりが悪いことなどが,液晶パネルよりコストが高い要因という。

 照明用LEDに対しては,発光効率でもコスト面でもまだ大きな差がある。現在普及している白色LEDの発光効率は,高水準のもので60~80lm/W程度だが,有機ELは発光効率が高いものでも10~20lm/W程度。コストについても,白色LEDの光束当たりの単価が10~20円/lmなのに対して,有機ELは少なくともその10倍程度とする。このため,有機ELが家庭用などの一般照明用途で普及するには時間がかり,当面は美術館や博物館,店舗照明などのニッチ市場を狙うことになると分析する。

2012年の有機ディスプレイおよび照明の市場規模は5000億円に

 矢野経済研究所は,有機ELのディスプレイ用途および照明用途の市場規模が合計で2008年には1300億円,2010年には3000億円,2012年には5000億円に達すると予測する。携帯電話機のメイン・ディスプレイ向けの市場規模は,2007年後半に現在の約2倍強になると推測する。照明向け市場は2012年に400億円程度とみており,一般照明用途ではなく特殊用途で成長している段階とみる。

有機ELの世界市場の規模予測
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