米iSuppli社による「iPod nano」の新機品のコスト分析
米iSuppli社による「iPod nano」の新機品のコスト分析
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 米Apple Inc.が2007年9月6日に発売した携帯型音楽プレーヤー「iPod nano」の新製品に関して,米iSuppli corp.は部品メーカーやコストの分析結果を発表した(発表資料)。iSuppli社が同製品を分解して調査した。それによると,今回発売されたiPod nanoは従来機種で搭載していた部品をほとんど搭載しておらず,新たなメーカーの部品を数多く使用しているという。iPod nanoは,この部品変更によって大幅なコスト削減に加え,従来製品より機能を強化したとiSuppli社は分析する。

 iSuppli社が推測したiPod nanoの1台当たりの部品コストは,4Gバイト機が58.85米ドル,8Gバイト機が82.85米ドルである。4Gバイト機の部品コストは,2006年後半に発売された従来機種のコスト72.24米ドルより18.5%減少した。一方,今回発売したiPod nanoの販売価格は4Gバイト機が149米ドルで,8Gバイト機が199米ドル。販売価格に占める部品コストは,それぞれ約39.5%,同41.6%である。iSuppli社によれば,この割合はこれまでのApple社製品の部品コストの割合よりも低いという。iSuppli社はこれまでにApple社の「iPhone」や「iPod Shuffle」,「iPod nano」の従来機種を分解しているが,それらの多くは部品コストの2倍程度に販売金額を設定していたとする。なお,今回推定した部品コストには,部品とその他の材料のコストのみを含んでおり,研究開発費や製造,ソフトウエア,知的所有権,アクセサリ,包装にかかるコストは含んでいない。 

新メーカーMicron Technology社が部品コスト全体の約半分を占める

 iSuppli社によれば,今回発売の機種から部品を提供するようになった半導体メーカーは,米Micron Technology, Inc.,ドイツDialog Semiconductor GmbH,米Intersil Corp.という。米Synaptics Inc.は,一時期iPod nanoの部品メーカーから外れていたが復活した。従来機種から部品供給を継続するメーカーは,オランダNXP Semiconductors社と米Cypress Semiconductor Corp.。今回のような大幅なメーカー変更は,しばしは部品メーカーを変えてきたApple社にとっては珍しくない,とiSuppliは説明する。

 新たに加わった部品メーカー中で,最も多額の部品コストを占めるのはMicron Technology社。同社は記憶媒体としてNANDフラッシュ・メモリを供給する。同社のNANDフラッシュ・メモリのコストは,4Gバイト機で24米ドル,8Gバイト機で48米ドルとみられる。部品コスト全体に占める割合は,それぞれ40.8%と57.9%である。これまでApple社にNANDフラッシュ・メモリを供給してきた主要メーカーは,韓国Samsung Electronics Co. Ltd.や東芝,韓国Hynix Semiconductor Inc.などだった。Micron Technology社は2006年も少量のNANDフラッシュ・メモリしか供給できなかったが,新機種へのNANDフラッシュ・メモリ供給で大きく成功したといえる。ただし,Apple社は今後も,Samsung Electronics社のNANDフラッシュ・メモリを使用し続けるだろうとiSuppli社は予測する。

 Samsung Electronics社は,今回発売された新機種へコア・ビデオ・プロセサとマイクロプロセサの複合チップを供給している。このチップのコストは8.6米ドルで,部品コスト全体に占める割合は4Gバイト機で14.6%,8Gバイト機10.4%である。Samsung Electronics社は,2006年後半に発売された従来機種でもコア・プロセシングICを供給しており,今回で2度目の供給となる。加えて,同社は32MバイトのSDRAMも供給している。同部品のコストは2.72米ドルで,4Gバイト機の部品コスト全体に占める割合は4.6%,8Gバイト機に占める割合は3.3%である。
 

2007年のiPod nanoの出荷台数は2300万台に

 iSuppli社は,2007年におけるiPod nanoの出荷台数を2300万台,2008年における出荷台数を2790万台と予測する。

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