アキレスは,2006年8月に発表した「ナノ分散ポリピロール(PPy)液」(Tech-On!関連記事)を活用し,樹脂の表面にめっきする技術を開発した。同社はこの新技術を,電磁波シールドフィルムや透明フィルムアンテナ,ICタグなどに応用する予定。一部の製品については,2008年春の実用化を目指して開発を進めている段階という。

 一般に樹脂の表面に無電解めっきを加工する場合,基材とめっき膜の密着性を向上させるために,前処理として樹脂の表面にエッチングを施す必要がある。そのため,無電解めっきを適用できるのは,ABSやポリカーボネート(PC),ポリアミド,変性ポリフェニレン・エーテル(PPE)などのエッチングが可能な樹脂に限られていた。

 これに対して新技術では,ナノ分散PPy液を塗った後に触媒付与液とめっき液の2種類を使うだけで,さまざまな樹脂基材に密着性の高いめっき膜を形成できる(図1)。例えば,従来は密着性の低かったポリエチレン・テレフタレート(PET)やポリ塩化ビニル,ポリオレフィンなどの素材にも,ピーリング試験で2.0N/mm以上と高い密着性で加工できるようになった。

 これまで前処理液として使っていたのは,クロム酸と硫酸混合液,有機溶剤と水混合液など,素材に応じて7種類以上。それに対して新技術では,前処理液が1~2種類で済む。これによって連続無電解めっきが可能になり,前処理にかかる時間を1/10程度に短縮できた。さらに,クロムや強酸,有機溶剤といった有害物質を使わないので,環境負荷も減らせる。

 新技術ではナノ分散PPy液を塗った部分にめっきが析出する。この特性を生かせば,パターン化されためっき加工も可能だ(図2)。汎用のグラビア印刷機で細線を印刷すれば,幅50μmでパターンを作成できる。今後は印刷方法を工夫し,10μm幅以下の微細化を目指すという。

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図1◎従来の方法(左)と新技術(右)の工程数の比較
図1◎従来の方法(左)と新技術(右)の工程数の比較
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図2◎パターン化しためっき加工の例
図2◎パターン化しためっき加工の例
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