ヒロセ電機は,携帯電話機のヒンジ部での利用に向けた光配線技術を「ヒロセ技術展」で展示した。光伝送システムとして消費電力が少ない,最小曲げ半径が2mmと小さい石英製光ファイバを用いたケーブルの採用といった点を特徴にうたう。会場では基板に実装された発振波長850nmのVCSELから光を出射し,石英製光ファイバを通じて光信号を伝送する。伝送速度は1.25Gビット/秒。その光信号を別基板に実装した受光素子で光電変換し,伝送系の電気信号を測定器の画面に表示していた。

消費電力は25mW


 今回展示した光伝送システムの消費電力は25mWと,「通信系の伝送システムを単に応用した場合の200~300mWに比べて非常に低くできた」(説明員)という。今年中に20mW以下にする考えだ。20mW以下になれば,「携帯電話機での採用がみえてくる」(説明員)という。

 機器内での光伝送は,電気信号の場合に比べて,高速信号を伝送する際に乗じる雑音を抑制しやすい。この一方で,電気信号による伝送に比べて消費電力が高いことが普及への課題の一つになっている。いったん光電変換する分が損失となり,電気信号による信号伝送に比べて消費電力が高くなるためだ。

 携帯機器や据え置き型機器に向けた光配線技術の研究開発に取り組んでいるメーカーは多い。だが,競合他社の試作展示では消費電力の数値は大抵明らかにされない。今回の展示で具体的な数値を明らかにしたヒロセ電機は,消費電力の課題を克服しつつあると言えそうだ。ただし,VCSELからの光出力といった具体的な使用条件を明らかにしていない。1.25Gビット/秒の伝送ができる程度の光を出力しているとコメントしただけである。

最小曲げ半径は2mm


 石英製光ファイバ・ケーブルの最小曲げ半径が2mmと小さいことも特徴とする。「携帯電話機のヒンジ部の直径はおおよそ4mm程度。ここで利用するには最小曲げ半径約2mm以下が求められる」(説明員)からだ。耐久性も高めた。例えば370万回の屈曲試験にも耐えられるという。10万回あれば携帯電話機への採用に耐えると説明する。
 
 今回の光ファイバ・ケーブルは,光ファイバの直径を細くしたことや光ファイバの被覆材を改良することなどで最小曲げ半径2mmを実現したという。―20~+70℃の温度範囲で使用できる。

コネクタの低背化を目指す


 ヒロセ電機は今後の光配線の普及の課題として,「実装性を電気並みにすること」(説明員)を挙げる。解決策の一つは光配線で用いるコネクタの低背化である。高さ1~1.5mm程度になれば,携帯電話機での利用が見えるという。今回の展示で見せたコネクタの高さは公表していないが,同社はこうしたコネクタ技術が光配線技術の導入のカギを握るとみる。

 なお,光ファイバ・ケーブルとコネクタを同社が作製したことと「半導体は作製していない」(説明員)こと以外は,今回の光伝送システムに利用した部品の製造元について明確にしていない。

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