車載向け娯楽情報機器の売上高の予測
車載向け娯楽情報機器の売上高の予測
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 米iSuppli Corp.は,米Apple Inc.のCEOであるSteve Jobs氏とドイツVolkswagen AG(VW社)のchief executiveであるMartin Winterkorn氏が会談し,Apple社の携帯型音楽プレーヤー「iPod」の機能を搭載した自動車の製品化について話し合ったのではないかとの推測を発表した(発表資料)。この自動車は現在,「iCar」という呼び名で話題になっているという。しかし,iSuppli社はiCarに対する消費者の需要は大きいものの,Apple社とVW社の提携は大きな課題に直面し,iCarが登場するまでには3~4年かかると予測する。

 iSuppli社は,Jobs氏とWinterkorn氏の会談の中で,実際にiCarが議論されたかどうかは確かでないとするが,もしiCarが実現するならば両社が大きな利益を得る可能性は高いという。Apple社にとってはiPodの市場が自動車分野にまで拡大することを意味し,VW社にとってもiCarがヒット商品になることは間違いないとする。米Google Inc.の検索サイトでは「VW + iCar」というキーワードでの検索数が200万件以上にのぼっているという。

 iSuppli社の予測値によれば,車載向けの娯楽情報機器(infotainment)の市場規模は2012年に500億米ドルに達する。2006~2013年の同市場の成長率は,年平均で8%になる見通しである。自動車の市場規模が年平均3%で推移していることと比べると,消費者の車載向け娯楽情報機器に対する需要は非常に大きいといえる。

iCarの課題はApple社とVW社の文化の違い

 iSuppli社が挙げるiCar開発の大きな課題の一つは,両社の文化の違いである。Apple社は,音楽プレーヤーや携帯電話機,パソコンなどの人気商品を市場に提供して大きな利益をあげる,革新的で活力に満ちた企業だが,VW社はApple社より保守的だという。開発サイクルが4~5年で利益率が小さく,厳しい品質基準に準拠した生産が求められる自動車業界では,自動車メーカーは多くの製品のリコールの経験から,デザインや開発に慎重なアプローチを採る。欠陥品が出た場合の返金保証による利益への影響は,家電よりも自動車の方が大きいため,自動車メーカーは新たなヒット商品を生み出すよりも,長期間の信頼性が高く,手堅くて,繰り返しテストされた製品に興味があるとする。

保証期間の違いも障害に

 保証期間の問題も,iCarにとってネガティブな影響を及ぼしそうだとiSuppli社は説明する。例えばiPodが故障した場合,最新モデルに買い替えるユーザーは多いだろう。しかし,購入して2年しか経っていない自動車に搭載された娯楽情報機器が故障した場合には,自動車メーカーは責任を問われ,修理費用を負担しなければならない。このように自動車メーカーは,自動車の全保証期間について責任を負わねばならないが,一般的にその期間は3~5年続く。家電メーカーにとって,製品の製造開始から最大10年程度まで製品の保証を強いられるという衝撃は,iCarの開発というアイデアをつぶしてしまう可能性もあるという。Apple社とVW社,あるいは「Audi」や「Bentley」,「Bugatti」といったVolkswagen Groupのブランドが本当にiCar開発チームを結成したとしても,少なくても2010年か2011年まで最初のiCarが登場することはないだろう,とiSuppli社は予測している。

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