神奈川大学名誉教授の松下昭氏,および同氏が取締役社長を務める日本システム研究所は,非接触ICカード技術の特許を侵害されたとして,非接触ICカード「FeliCa」を開発したソニーおよび同カードを採用する「Suica」サービスを展開したJR東日本に対し,損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こした。請求した賠償額は計20億円。

 松下氏は1997年ごろからソニーに対して特許のライセンスを求めていたが,ソニーはライセンスを拒否していたという。「知的財産立国を標榜するにも関わらず,基本特許が顧みられないという日本の現状に一石を投じたかった」(松下氏)。

  松下氏の弁護士グループは,特許が有効である2005年6月までのライセンス料について,ソニーが約75億円,JR東日本が約21億円と算出。その一部としてソニーに15億円,JR東日本に5億円の賠償を請求した。

 ソニー広報センターは「訴状は受け取っている。係争の案件にはコメントはできない」,JR東日本の広報部は「主張は訴訟で明らかにする」としている。

RFIDタグにも適用される基本特許と主張

 侵害の対象とされる2件の特許は,いずれも1985年に出願したもの。このうち1991年に登録された「第1601672号」は,リーダー/ライターが出力する搬送波からICカードがデータ出力用クロックを作り出す技術に関するもの。松下氏によれば「ICカードのみならず,RFIDタグを含めた近距離通信技術の基本特許になり得る」という。2004年に登録された「第3574452号」は,ICカードとカード・リーダーとの距離に応じて搬送波の出力を調整する技術に関するものである。

 松下氏は,前述の特許を含めて1985年に出願した9件の特許について,単一の特許として米国特許を出願,1989年6月に登録されている。特許番号は4,837,556。これまでに,東芝,三菱電機,米Intel社,米HP社などが出願した33件の米国特許が同特許を引用している。

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