政府各省庁の2008年度予算の概算要求が出そろった。製品安全対策や原子力発電所の安全確保,地上デジタル放送への移行に前年以上の予算を振り向けるなど,時勢を映した内容になっている。

 経済産業省は,一般会計が前年度比18%増の総額5033億円,特別会計が同9%増の1兆1886億円という概算要求を発表した(PDF形式の発表資料)。このうち8241億円をエネルギー対策に振り向ける。次世代自動車・燃料技術の開発に前年度比15%増の653億円,バイオ燃料の導入支援には同17%増の1129億円を割り当てる。具体的には,バイオ由来燃料を混合してガソリンを製造した場合に揮発油税(ガソリン税)の一部を免除する制度の創設を目指すといった活動を予定している。

 2007年の時事問題を反映させた案も数多く盛り込まれている。例えば,原子力発電所の安全確保に関しては,特別会計として前年度比4%増の341億円を割く。新潟県中越沖地震での柏崎刈羽原子力発電所の被災を受けて,耐震安全性の評価作業を前倒しするとともに,その評価方法も高度化を図るとする。

製品の経年劣化対策などの費用は6割増

 製品安全対策などの消費者保護には前年度比57%増の13億円を費やす。経年劣化などの危険性のある製品について,メーカーに点検の実施や消費者への情報提供を求める制度を整備する(Tech-On!関連記事日経ものづくり関連記事)。模倣品や海賊版の拡散防止に向けては一般会計と特別会計の合計で同15%増の17億1000万円を割く。北海道洞爺湖サミットでの関係国との協議,海外での被害状況の調査などを予定している。

 もちろん,首相の所信表明に盛り込まれた「イノベーション」にも,一般会計と特別会計を合わせて約2700億円という規模で予算を割く。今回は,「ドリームチップ開発プロジェクト」の推進(15億円),電子タグや電子データ交換(EDI)の共通基盤の整備(16億円)といったが項目が新設された。ドリームチップとは「いつでもどこでも自由に通信できる携帯電話」などのニーズに応えられるような「これまでにない高機能な半導体」のことだという。

総務省は4Gやスーパーハイビジョンに新規予算

 総務省の概算要求は前年度比8%増の17兆4089億円と,経産省に比べてケタ違いだ(PDF形式の発表資料)。ただし,このうち16兆円以上が地方自治体に,約8300億円が恩給に振り向けられるため,戦略的に割り振りできる金額はそう大きくない。

 恩給などを除いて最も金額が大きいのは「ユビキタス・ネットワークの整備」に向けるもの。一般財源からの200億8000万円に加えて電波利用料財源からも一部を割り当てる予定だ。ケーブル・テレビ網や光ファイバ網,無線アクセス・システムなどの整備や携帯電話のエリア拡充を支援する。また,地上デジタル放送への移行に向けた中継局などの整備補助に9億6000万円を,アナログ放送終了に向けた実証検証に1億円を充てる。

 新技術の開発や新システムの構築には188億8000万円と電波利用料財源の一部を振り向ける。2007年度にはなかった新項目は,正確で即時性の高い自動音声翻訳技術や,第3.9~4世代の次世代移動体通信システム,超高精細映像放送(スーパーハイビジョン)を実現するための符号化技術,立体映像技術などだ(Tech-On!関連記事)。

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