写真:記者会見の様子。左から,日本音楽著作権協会 常務理事 加藤衛氏,著作権問題を考える創作者団体協議会 議長 三田誠広氏,日本漫画家協会 常務理事 松本零士氏,日本美術家連盟 常務理事 福王寺一彦氏。
写真:記者会見の様子。左から,日本音楽著作権協会 常務理事 加藤衛氏,著作権問題を考える創作者団体協議会 議長 三田誠広氏,日本漫画家協会 常務理事 松本零士氏,日本美術家連盟 常務理事 福王寺一彦氏。
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 「著作権問題を考える創作者団体協議会」(以下,創作者団体協議会)は,文学作品や写真,音楽などの著作権情報をインターネット上で検索できるWebサイトを,2009年1月を目標に構築する。2007年8月31日の記者発表会の中で明らかにした。

 同協議会は,日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本文藝家協会など,計17の創作者団体が構成する。同サイトにより,著作権の保護期間や権利者などの情報をだれでも簡単に検索できるようにしたいという。ただし,開設時点でどの程度の件数の情報を集められるかといった具体的な数値については明らかにしなかった。

 現在,著作権のあるコンテンツを利用しようとすると,利用者は多くのハードルを越えねばならない。例えば,ある人が著作権者の分からない小説を再出版したいと考えた場合を想定しよう。自力で著作権者を見つけられなかった場合,利用が可能かどうかの裁定を文化庁に申請することになる。その際,小説の出版社名だけでも自力で見つけ出すなどの「相当の努力」が認められなければ,申請は通らない。仮に申請が認められ,さらに裁定で小説の再出版が認められたとしても,通常の使用料と同じくらいの保証金を預けなければならないなど,利用者の負担は少なくない。

経団連らのデータベースとの連携も

 今回,創作者団体協議会が発表した計画では,加盟17団体がそれぞれ,会員の作品や著作権者,作品が著作権で保護される期間などの情報をデータベース化し,1つのWebサイトからアクセスできるようにするというもの。日本経済団体連合会(経団連)とコンテンツを制作・保有する企業などが2007年6月14日に開設した,エンターテインメント向けコンテンツを検索できるWebサイト「ジャパン・コンテンツ・ショーケース」との連携も予定する。同ショーケースが既にデータベース化している,映画や音楽,アニメなど,約350万件の作品の情報を活用したいという。

 そのほか,国会図書館などにもデータ提供を求めていくとしている。さらに,著作権情報に関する電子掲示板なども同協議会のWebサイトの中に設け,利用者同士が「この作品の著作権者を知りたい」「それは・・・」といった形で情報交換することも促進していきたいという。

著作権の保護期間延長をにらむ

 今回のWebサイトを構築する狙いは,利用者の利便性向上のほかにもあるようだ。現在日本には,著作権の保護期間を,作者の死後50年から70年に延長しようという動きがある。同協議会は,保護期間延長の必要性を一貫して主張している。だが,これに反対する意見として,著作権者が不明の作品を利用する場合「現状ではコストが高いという指摘を受けたことがある」(創作者団体協議会 議長の三田誠広氏)という。今回のサイトが利用のコストを下げ,保護期間延長に向けた追い風になることも期待しているようだ。

 さらに,現在のように手間のかかる裁定制度が「利用者に正式な手続きをためらわせて,著作権侵害のケースを増やしている可能性もある」(同氏)という。同協議会は,サイトを通じて多くの著作権情報を提供することにより,著作物を無断で使用するケースが減ることも期待しているようだ。

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